マーケティングオートメーションをはじめとするデジタルマーケティングプラットフォームを開発・提供するMarketo(マルケト)はこのほど、次世代のデジタルマーケティングについての提言や事例紹介などを行う「THE MARKETING NATION SUMMIT 2016」を開催。その基調講演において、MarketoのCEOであるフィル・フェルナンデス氏とマーケティング担当副社長であるチャンダー・が『TOMMOROW’S MARKETER これからの未来に必要なマーケター像を語る』と題したプレゼンテーションを行った。その内容を基に、これからのマーケターが持つべき視座や姿勢について考察する。
フェルナンデス氏はまず、この10年を振り返り「マーケティング」という存在そのものの価値変化についてまとめた。
同氏は、「これまでのマーケターは(企業の中における)コストセンターだった」と指摘。つまり、マーケティング部門は広告施策を考えて必要な広告メディアを購買したり、見込み顧客のリードを収集して営業に渡したりすることが仕事であり、そこで直接的に売上を生み出すことはないということだ。
しかし、この10年の間にその位置づけは大きく変化した。マーケターは様々なデータに基づいてファクトを見極め、顧客を探し出して売上に貢献するようになり、統合されたプラットフォームの中であらゆるツールと豊富なコンタクトポイントを活用して顧客と接点を生み出すことができる。マーケターと顧客の距離がより近くなったことにより、マーケターはより深く顧客のサポートをすることができるようになり、そこから売上を生み出す機会も拡大しているのだ。
「デジタルテクノロジーによって仕事の方法やマーケターの役割が変わってきた」(フェルナンデス氏)。
では、このような変革を遂げたマーケティング環境で活躍するマーケターには何が求められるのだろうか。
ひとつは、常に顧客視点で、顧客のカスタマージャーニーに長い時間を掛けて寄り添っていく必要があるということ。そして、目覚ましい進化を遂げているビジネスソフトウェア、プラットフォーム、データベースを駆使して顧客ひとりひとりを理解し、良い関係性を作っていくということ。そして、企業のビジネスに大きなインパクトを生み出す戦略家であることが求められるということだ。
「これからのマーケターは、ただ売上に貢献するだけでなく、企業が厳しい市場競争に勝つための大きな武器となる。これからの時代のビジネスにおける中核的な存在となるだろう」(フェルナンデス氏)
顧客獲得からユーザーロイヤリティの強化までを統合的に運用する
フェルナンデス氏は、こうしたマーケティング環境の変化に対して、新しい顧客を獲得して売上の源泉を拡げるためのインバウンドマーケティング、既存顧客からターゲット顧客を抽出してマーケティングとセールスが連携してリテンションやアップセリングを行うアカウントベースドマーケティング、ペイドメディアを活用したデジタル広告の運用効率化、既存顧客の理解深化とエンゲージメントの強化という4つのフェイズを統合したマーケティングソリューションによって、顧客との継続的な対話の実現と売上機会の増加をサポートしたいとしている。
加えて、近年ニーズが高まっているモバイルマーケティングについてフェルナンデス氏は、位置情報の連携やモバイル決済技術との連携などその特徴を挙げた上で、「モバイルマーケティングは単体では存在できず、ウェブサイトやソーシャルメディアと繋がっており、より広いカスタマーエンゲージメントのストーリーがある」と語り、Marketoではメール、ソーシャルメディア、ウェブなどの機能と連携し、統合されたマーケティングシステムとして機能していくという方針を語った。
もちろん、顧客獲得からユーザーロイヤリティの強化に至るまで、全ての過程で中心にあるのはデータだ。この点についてフェルナンデス氏は、「今年、マーケターたちはこの重要性について未だかつてなく気が付き始めている。そして、マーケティングによって生まれたデータを他のデータと統合し、活用し始めている。顧客に関するデータをひとつにまとめることで、よりインテリジェントな形で顧客との関係作りができるようになり、また顧客データを基に類似のロイヤリティ顧客を探し出すことができるようになる。それによって、様々なマーケティング手法が広がっていくだろう」とコメント。ペイドメディア施策などから得られる「サードパーティーデータ」ではなく、企業自身が保有している顧客データ「ファーストパーティーデータ」にフォーカスを当てることが重要だという考えを示した。