米TintriでCEO兼Chairmanを務めるケン・クライン(Ken Klein)氏と、Office of the CTOを務めるブランドン・サーモン(Brandon Salmon)氏が6月末に来日。国内戦略とTintri VMstore新機能を説明した。

仮想化環境とクラウド環境に特化したVM-awareストレージ(VAS)を展開するティントリ。ワールドワイドの売上高は前年比2.4倍超の成長を維持し、顧客数は1000社、Tintri上で稼働している仮想マシン数は55万VMを超えた。世界中で稼働する仮想マシンの数は8500万VM、市場規模は90億ドルとも言われるなか、CEOのケン・クライン氏は「仮想化とクラウド市場の拡大は続いている。VMに特化したストレージでさらなる拡大を目指す」と意気込む。

米Tintri CEO兼Chairman ケン・クライン(Ken Klein)氏

国内では、2012年に日本法人を設立し、2014年に富士通をパートナーとして「ETERNUS TRシリーズ」の提供を開始してから、ユーザーの認知度が急速に高まっている状況だ。クライン氏は「国内での導入企業は200社を超え、売上高は2桁増を続けている。日本はいまやワールドワイド売上高の約10%を占める市場。日本のユーザーの声は製品開発の方針や新機能の開発にも大きな影響を与えている」と、国内市場の重要性を強調する。

国内ユーザーには、OEM製品を提供するとともに沼津ソフトウェア開発クラウドセンターの基盤として採用する富士通や、社内と一般向けに仮想デスクトップサービスを提供するNTTネオメイト、会計事務所向けサービスの基盤として採用するTKC、広告サービスの基盤に採用するアドウェイズ、CCCグループの社内共通仮想化基盤として活用するT-MEDIAホールディングス、ネットサービスの基盤に採用するDMM.comなどがある。業種は、金融、製造、流通、医療、通信、自治体など多岐にわたる。

クライン氏はこうした状況について、「Tintriの適用領域は大きく3つある。1つは社内のサーバ仮想化の基盤として採用するケース。2つめは仮想デスクトップサービスの基盤として採用するケース。3つめは顧客向けに提供するクラウドサービスやプライベートクラウドの基盤として採用するケースだ。多くのワークロードが仮想化環境、クラウド環境に移行するなか、Tintriはユーザーのビジネスを支える重要な基盤になっている」と説明する。

ケン・クラインによれば、同社製品の強みは、コスト、アジリティ、スケールという3つのキーワードで表すことができるという。

コストでは、CapEx(Capital Expenditure)、OpEx(Operating Expense)に劇的な効果をもたらすという。これは、VMのワークロードを最適化し集約率を高めることで初期投資を抑えた導入が可能で、SANのようなLUNやボリュームの管理が不要であるため、サイジングやパフォーマンスのチューニングにかかるコストが削減できることにより実現する。

ケン・クライン氏は「運用管理コストを98%削減した企業も少なくない」とアピールする。

アジリティについては、初期設定の容易さ、仮想マシン立ち上げの速さ、パフォーマンスの高さが特徴だという。これはSSDフラッシュヒット率は99%に達し、管理画面からVM単位でのQoS設定が可能な部分に起因し、これにより、ストレージに起因するボトルネックをなくし、状況の変化に合わせたビジネスの迅速な対応が可能になる。

そしてスケールは、筐体を追加することで容量を柔軟に拡大できる点が特徴だ。容量設計が不要で、ビジネスの拡大にあわせて容量を拡張していくことができるためだ。クライン氏は「筐体の追加購入は新規購入の2.7倍に達するなどリピート率がきわめて高い。製品の返品はこれまでに一度もない。信頼性の高い基盤を柔軟にスケールさせることができる」と語る。

これらの特徴は、最近のアップデートでさらに強化された。Office of the CTOのブランドン・サーモン氏は、大きく3つの機能強化を行ったと説明する。

「強化のポイントは、VMスケールアウト機能の提供、Analytics機能の提供、ラインアップの拡充の3つだ。新しい発想のアーキテクチャを採用し、これからの仮想化、クラウド時代に対応できるようにした」(サーモン氏)

米Tintri Office of the CTOのブランドン・サーモン氏

VMスケールアウトは、VM単位でストレージノード間を安全にロードバランスするための機能だ。6月には国内発表も行った。VMスケールアウトは、ストレージノードを追加するとストレージプールを自動的に拡張し、VMの稼働状況を分析して、ストレージプール内の最適なノードを判断しVM単位で自動的に分散配置する。

「VMスケールアウトは、仮想化環境に最適化した疎結合のストレージプールとして構築する。1台からスタートして、最大で32台、10PBという巨大なストレージプールで16万台のVMを稼働させることができる。10PBまで拡張しても、管理コンソールは1つで管理性は変わらない。そのため、ストレージ管理者1名で対応することができる」(サーモン氏)

米国ユーザーのなかには、8つのデータセンターで74データストア、合計2.8PBのストレージを管理しているケースもあるという。月に5万VMが稼働させアップタイム99.999%を実現しているが、管理は1人の担当者が週4時間で行っているという。VMスケールアウトはこうしたユーザーのさらなる拡大をサポートするものになる。

Analytics機能は、ストレージのローレベルの情報を使って、統計分析や予測分析を行うための機能だ。ダッシュボード上でストレージの状況をリアルタイムに把握したり、将来の特定の時期にどのくらいストレージ容量やパフォーマンスが求められるかなどを予測して表示したりできる。基本的なパフォーマンス分析やログ分析は標準機能で提供されているが、より高度なログ分析を求める声は多く、それに応じたものだという。現時点で日本での展開時期は未定だが、ユーザーの声を聞きながら展開を進めていくという。

ラインアップの拡充は、オールフラッシュ製品3機種の容量別の展開のことだ。こちらも国内発表を行っているが、3次元NAND型フラッシュを3つの容量別に9ラインアップで展開する予定だ。

「Tintri VMstore T5000」シリーズ3モデルの容量構成パターン

そしてクライン氏は、「物理環境から仮想化へ、仮想化環境からハイブリッドクラウドへの進展は着実に進んでいる。なかでも、自社のプライベートクラウド環境や顧客向けのクラウドサービス基盤は、大規模化が進み管理負荷が高まっている。Tintriは機能強化に取り組みながら、そうしたユーザーがこれからのクラウド時代で勝ち抜いていくことを支援していく」と強調した。