ディー・エヌ・エー(DeNA)とPreferred Networks(PFN)は7月14日、ディープラーニングを含む人工知能(AI)技術を活用した企業向けソリューションや消費者向け商品・サービスの提供を目的とした合弁会社「PFDeNA」の設立を発表した。
新会社では、DeNAの既存事業に対しPFNのAI技術を適用することで新しいサービスの開発・提供に取り組むほか、DeNAがカバーしていない分野に対してもインターネットとAIを組み合わせた新事業の創出を目指す。
PFNは東京大学発のベンチャー企業Preferred Infrastructureから2014年にスピンオフした会社で、ファナックやトヨタ自動車などとの協業実績がある。両社はすでに2016年5月より、DeNAのMobageユーザーに対して「対話型AI」の導入を試験的に開始するなど具体的な取り組みを開始。この「対話型AI」が"人間っぽい"挙動を示したことによって両社とも自信を深めたようで、PFDeNAでもDeNAの各事業領域に対する同AIを用いたカスタマーサポートサービスの開発に着手するとしている。
DeNAがAI技術に注目したのは2015年10月にGoogleのAlphaGoが囲碁のトップ棋士を破ったことがきっかけとのことで、DeNAの守安功 代表取締役兼CEOは「AIがトップ棋士に勝つにはあと10年かかると言われていた。このように、10年かかると言われていることが、AIによって今後2~3年で実現する可能性がある。それがどういう分野かはわからないが、DeNAとしては可能性があるならば2~3年で起きるという方に賭けたい」と説明する。
また、AI技術を研究する企業が数多くある中でPFNを選んだ理由については「PFNはディープラーニングにおける圧倒的な技術力をもつ。アルゴリズムを研究したり、ソフトとして実行するだけでなく、大規模なデータをどう処理するかというノウハウだったり、AIのアウトプットをロボットなどの制御に使用して、リアルな世界に反映させていくというところまで含めて非常に実力を持っている。日本では頭1つ2つ完全に抜けていて、世界でもトップレベルだ」(守谷氏)とコメントし、AIを活用した事業展開を推進すべくDeNAから今回の協業を持ちかけたと明かした。
一方、これまでB2Bに主軸を置いてきたPFNとしては、DeNAが保有する数千万人のユーザーおよび50億アクション/日という膨大なデータを用いてディープラーニングの研究開発を加速させていきたい考えだ。PFNの西川徹 代表取締役社長 CEOは、AIおよびディープラーニング技術はすでに実用的なレベルに達しているとの見解を示しつつ「機械をさらに賢くするためには人と機械をインタラクションさせ、人間とのコミュニケーションをしていかないといけない。DeNAの強みは人に向けたサービスをたくさん作っていること。私たちはB2Bのサービスばかりやってきたが、(今回の取り組みでは)B2CとB2Bの世界を融合してやっていきたい」と語った。
PFDeNAの具体的な取り組みについては上述の「対話型AI」以外で詳細は明かされなかったが、ゲームやヘルスケア、自動車などの分野に向けたAI技術を用いた新サービスの構想はすでにあるとのこと。なお、DeNAはゲームで任天堂、自動車でZMPといった協業先を持ち、PFNも上述の通りファナックやトヨタと協業しているが、PFDeNAでは両社の既存の協業先と競合しないかたちで事業を展開していくとしている。