ディー・エヌ・エー(DeNA)は7月7日、仏ベンチャー企業EasyMileと業務提携し、私有地における無人運転バスを使用した交通システム「Robot Shuttle(ロボット・シャトル)」の運用を開始すると発表した。

都内で開催された会見に出席したDeNAの中島宏執行役員(左)とEasyMileのジルベール・ガニェールCEO

8月からイオンモール幕張新都心で運用開始

DeNAは現在、オートモーティブ事業部門においてZMPと共同で合弁会社を設立した「ロボットタクシー」、個人向けカーシェアリングサービス「エニカ」などを展開。自動運転サービスという点では「ロボットタクシー」事業がすでに存在するが、「ロボットタクシー」が公道で展開するサービスであるのに対し、「ロボット・シャトル」は私有地を対象としている点で大きく異なる。

車両はEasyMileが開発した「EZ10」を使用。「EZ10」は屋根のDGPSセンサー、前後のカメラ、ホイールの走行距離計と慣性計測装置を用いて車両の位置を検出し、あらかじめ決められたルートを走行する。安全面では、緊急停止ボタンや安全制御装置、障害物検知用レーザーセンサー、緊急ブレーキなどを装備する。

最大速度は40km/h、定員は12名(着席6名・立席6名)で、動力は非同期電気エンジン。110V~230Vで充電可能なリチウムイオン電池を使用し、走行時間は最長10時間。全長は約4m、全幅は2m、車両総重量は1700kgとなっている。実際の運行時は10~20km/hで走行する。

EasyMileが開発した「EZ10」

サービスとしてはDeNAが車両、自動運転ソフト、保険、社会実装サポートなどをパッケージ化して各種公共施設、商業施設、テーマパーク、工場、大学などに提供していく。すでにイオンモールが2016年8月より期間限定で同サービスの試験導入を決定しており、イオンモール幕張新都心に隣接し、同社が千葉市から管理の一部を委託されている豊砂公園の敷地内において同店の客に向けた運営を行う。詳しい実施期間は調整中とのこと。

「ロボット・シャトル」サービスの仕組み

走行速度が遅くても安全面は重視

私有地に限定したサービスということで「ロボット・シャトル」は公道での自動運転より普及が早そうだ。公道での自動運転は50~60km/hの走行速度が求められるが、私有地では10~20kmでの走行が想定されているため、センサーやソフトウェアなどの技術的な要求が公道よりも低い。また、公道では法律面もクリアしなければならない。

ただ、公道に比べて走行速度が遅いとはいえ安全面が軽視されているわけではない。DeNAの中島宏執行役員は会見で「2重3重の安全対策をとったり、深刻な事故を起こしにくい形で提供していく。あらゆる考え方のもとで、実際のお客様を乗せて大丈夫だろうということでスタートしている」とコメント。また、EasyMileのジルベール・ガニェールCEOは「車両はシンプルな構成で、センサやCPUの冗長性を確保している」と「EZ10」の安全性について説明した。

サービスとしての将来性を考えると、モバイル向けサービスを手がけてきたDeNAのコンテンツ開発力に期待がかかる。例えば、「EZ10」に搭載されているタッチパネルは行き先案内に用いるとのことだが、イオンモールのケースであれば乗車中の消費者のニーズに応じたクーポンを配布することなども可能だろう。乗客に対して従来の交通手段にはなかった体験を提供できるとなれば、同サービスの想定ターゲットである商業施設やアミューズメント施設と相性は良いはずだ。