トムソン・ロイターは7月7日、「第4回リサーチフロントアワード」に選出された先端研究領域8つと、その領域で活躍する日本の研究機関所属の研究者12名を発表した。
リサーチフロントアワードは、今後飛躍的な発展が期待される先端研究領域(リサーチフロント)を特定するとともに、その領域で世界をリードする日本の研究者を広く社会に紹介することを目的とした賞で、2004年、2007年、2012年に続き、今回で4度目の発表となる。選定作業は、同社のアナリスト David Pendlebury氏が担当した。
同社は、2つ以上の論文が後に出版された論文の参考文献として同時に引用される「共引用」の関係をもとに、最も高い頻度で引用されている上位1%の論文(高被引用論文)をグループ化した研究領域をリサーチフロントと見なしている。
今回、学術文献引用データベース「Web of Science」に登録されている2010年~2015年の約800万報の論文を対象とし、高被引用論文を含む1万2188のリサーチフロントから、日本の研究機関が発表した注目度の高いホットペーパー(Hot Papers)を含む90のフロントに着目。これらをさらに分析し、最終的に8つのフロントおよびその研究領域をリードする12名の研究者を選定した。
選出されたフロントおよび研究者は下記のとおり。
1. グラフェン-六方晶窒化ホウ素の電子的および光学的特性
- 物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 電気・電子分野 電子セラミックスグループ 主席研究員 渡邊賢司氏
- 物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 機能探索分野超高圧グループ グループリーダー 谷口尚氏
2. 蛍光OLED
- 九州大学工学研究院 応用化学部門 主幹教授/最先端有機光エレクトロニクス研究センター センター長 安達千波矢氏
3. 確率的な熱力学とゆらぎの定理
- 東京大学大学院 工学系研究科 准教授 沙川貴大氏
4. 流動力学のモデリング
- 早稲田大学理工学術院 准教授 滝沢研二氏
5. コバルト触媒とC-H結合活性型反応
- 東京大学大学院 薬学系研究科 教授 金井求氏
- 北海道大学大学院 薬学研究院 教授 松永茂樹氏
- 北海道大学大学院 薬学研究院 助教 吉野達彦氏
6. 報酬シグナルとして働くドーパミンニューロン
- 東北大学大学院 生命科学研究科教授 谷本拓氏
7. 硫化水素によるシグナル伝達
- 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 神経薬理研究部長木村英雄氏
8. エーテルの触媒的クロスカップリング反応
- 大阪大学大学院 工学研究科 教授 茶谷直人氏
- 大阪大学大学院 工学研究科附属アトミックデザイン研究センター 准教授 鳶巣守氏
今回の受賞を受けて、物質・材料研究機構 渡邊 賢司氏は「本受賞となる六方晶窒化ホウ素単結晶の研究は、偶然発見した強い遠紫外線発光現象がきっかけとなって発展させることができました。いまではグラフェンなどの原子層科学の基盤を支える重要な物質にもなっています。科学の芽はけっして思うようには伸びていかないもので、これからどんな花が咲くのか楽しみです」とコメントしている。
授賞式は10月21日に東京・赤坂のトムソンロイターオフィスで行われる予定。