宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月7日、X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」によるペルセウス座銀河団の観測結果について発表した。
同成果は、ASTRO-Hプロジェクトのメンバーである約250名の研究者からなる国際研究チームによるもので、7月7日付の英国科学誌「Nature」に掲載された。
ペルセウス座銀河団は、太陽系から約2.5億光年遠方にある銀河団。中心には、巨大なブラックホールをもつ電波銀河(NGC1275)があり、そこから宇宙ジェットが放出されている。これまでの観測で、同銀河団中心の高温ガスがジェットによって押しのけられている様子が明らかになっており、宇宙ジェットが周囲の銀河団ガスにどのような影響を及ぼしているかを明らかにするための研究が続けられていた。
同研究チームは、「ひとみ」の事故前となる打上げの約1週間後から開始した観測装置立ち上げ段階で、搭載された軟X線分光検出器(SXS:Soft X-ray Spectrometer)によって同銀河団を合計23万秒間観測。取得されたデータから、SXSは打上げ前に見積もっていた以上の分解能を達成し、これまでの20倍以上の精度で高温ガスの運動を測定できることを軌道上で実証した。
また観測の結果、同銀河団の中心から10万~20万光年の範囲では、高温ガスの乱れた運動の速さは毎秒164±10km(視線方向の成分)と見積もられ、この運動が発生する圧力は、高温ガスの熱的な圧力の4%に過ぎず、予想を下回る低い値であることが明らかになった。
つまり、同銀河団中心部においては、巨大ブラックホールから吹き出す高速ジェットが高温ガスとぶつかり、高温ガスを押しのけているものの、その結果作り出されるはずのガスの乱れた運動は想定より小さく、"意外に静かだった"ということになる。