日立製作所(日立)と日立ビルシステムは7月6日、既設のエスカレーターの耐震強化に伴う、既設建物の改造工事を少なく抑える耐震強化構造を開発したと発表した。

一般的なエスカレーターには、上端と下端をそれぞれ建物のはりにかけて設置しており、大規模な地震などにより建物が大きく揺れると、端部がはりから脱落する可能性がある。2011年3月11日の東日本大震災発生を受け、2014年4月に想定される建物の層間変形角を最大で1/24とする告示が施行されたが、これは従来の業界耐震基準である1/100に対し約4倍の揺れを想定しており、新設・既設エスカレーターにおいて十分なかかり代の確保が必要とされている。しかし、既設エスカレーターのかかり代延長には、建物にエスカレーターを支える追加はりの設置を必要とするなど大規模な建物の改造工事が必要になるケースがあり、既設エスカレーターの耐震強化工事の課題となっている。

今回2社は、既設エスカレーター本体に金属製の「延長はり」を設置する耐震強化構造を開発。建物の床上に延長はりを設置することで、かかり代を大幅に延ばすことが可能になり、追加はりの設置を不要とした。また、この耐震強化構造では、エスカレーターの乗り口と降り口において、両脇に設置した延長はりでエスカレーターを支えるため、エスカレーターの重みが1点に集中してかからないように、重量を最適に分散させるとともに剛性を高めた延長はりの構造を考案した。

日立らは今回の開発技術について「この構造の採用により、エスカレーターを下から支える『追加はり』の設置が不要となり、既設エスカレーターの耐震強化工事における建物の改造工事を最小限にすることが可能となります。」とコメントしている。

同開発技術によって既設エスカレーターの耐震強化が進むことが期待される