さまざまなIoTプロダクトを手がけるCerevoは、ハードウェア開発向けブランド「Cerevo Maker series」の新製品として、タミヤから販売されている小型の動力付きプラモデル「ミニ四駆」(ワイルドミニ四駆シリーズ)をスマートフォンから操作できるようにする改造キット「MKZ4」の販売を開始する。発売開始は7月中旬。価格は税別5,980円(ワイルドミニ四駆、および無線LANモジュールにプログラムを書き込むためのキット「MKZ4WK」は別売り / 同社直販サイト価格)。
発表会の冒頭で、同社代表取締役・岩佐琢磨氏は、改造キットを販売するに至った経緯について説明した。政府主導によるプログラミング教育の義務化が検討されていることに触れ、「明確な目的がない」うえに「ソフトウェアだけにフォーカスされた、"画面の中で何かが変わるだけ"のプログラミング教育では面白くない」と考え、それに対するアンチテーゼとして、ソフトウェアだけでなくハードウェアの面白さも伝わるようなワークショップ「スマホで自由自在に操作できるIoTミニ四駆を作ろう!」を、昨年11月にDMM.make AKIBAと共同で3回にわたって開催。
同ワークショップはそれほど大きく告知していなかったにも関わらず、すべての回で予約開始直後に即満席になるほどの好評を博したそうだ。さらに、ワークショップ終了直後も「教材としての販売はないのか?」、「キットとして売らないのか?」、「東京以外でワークショップは開催されないのか?」、「次回開催はいつか?」といった問い合わせが相次いだことから、このようなプログラミング学習の需要の高さを認識し、「ビジネスになるのではないか」と考えたと語る。
また、従来の電子工作キットは値段が高すぎることや初心者には難しいこと、ハードウェアとソフトウェアの両方を体験できるものがないこと、子どもが楽しめるようなものがないことなどから、ハンダ付けから簡単なプログラミング、組み込みソフトのI2C経由書き込みなどを体験でき、作ったものを現実世界で動かして遊べる改造キット「MKZ4」の商品化を決めたという。ちなみに、日本工学院専門学校では、同キットを授業に導入することが既に決定しているということだ。
「MKZ4」の内容は、無線LANモジュール(SoC「ESP8266EX」搭載「ESP-WROOM-02」)やミニ四駆操作用の専用基板とステアリングパーツのほか、基板実装に必要な各パーツ、専用マニュアルが一式セットになっている。前述したワークショップで使用した部品類の設計を全面的に見直すことで性能が大幅にアップされているほか、ワークショップでは3Dプリンタで作られていたプラパーツを、強度・弾性率・耐衝撃性に優れたPOM(ポリアセタール)製のものを金型から起こして製作するなどの改良が加えられている。
なお、改造元となるタミヤの「ワイルドミニ四駆」シリーズを別途用意する必要がある。対応車種は「ランチボックス Jr.」、「ワイルドザウルス」、「ニッサン キングキャブ Jr.」、「ブルヘッド Jr.」、「トヨタ ハイラックス モンスターレーサー Jr.」、「トヨタ ハイラックス サーフ」、「ニッサン テラノ '93 パリダカ仕様(チーム NOK JATCO)」、「ダッシュ CBW コマンドザウルス」、「マンモスダンプ」。これらの「ワイルドミニ四駆」は本来、ステアリング機能は搭載されておらず、スイッチをオンにするとひたすら走り続ける仕様だが、「MKZ4」で改造することでステアリング機構が追加されるとともにスロットル制御が可能となり、Wi-Fi接続したスマートフォンを使ってラジコン模型自動車のように前進後進と左右のステアリング操作が可能となる。
また、「MKZ4」に含まれる無線LANモジュールにプログラムを書き込むために必要となるキット「MKZ4WK」は別売りとなる。ESP8266書き込み基板やUSBシリアル変換基板、micro USBケーブル、その他必要な電子部品が含まれる。なお、同キットはMKZ4の無線LANモジュールにプログラムを書き込むために一時的に利用するものなので、ひとつあれば友人同士や兄弟など複数のユーザーで使い回せるため、あえて別売にしたという。価格は税別1,980円。
さらに、電子工作ツールを所有していない初心者向けに、「MKZ4」での改造に必要なすべての工具類をセットにしたツールセット「MKZ4TS」を販売する。セット内容は、半田こて、半田、半田置き台、半田吸い取り器、テスター、精密ニッパ、ドライバ、ピンバイス、ドリル刃、精密ピンセット、マスキングテープ。もちろん、MKZ4の製作後もさまざまな電子工作などの用途に活用できる基本的なツールを揃えている。これらはCerevoのエンジニアがこだわり抜いて揃えたツールばかりで、岩佐氏は「見る人が見れば、結構良いモノを揃えていることをおわかり頂けると思う」とアピールした。価格は税別9,980円。
なお、ミニ四駆の改造方法を詳細に解説した電子書籍(Kindle本)の出版を予定していることを明かした。岩佐氏によれば、「MKZ4」に標準付属のマニュアルと比べて数十倍もの分量で、百数十枚もの大量の写真を使って詳しく解説されているだけでなく、完成後のカスタマイズ方法などについての解説やプログラミングの応用方法も含まれるということだ。価格は1,000円。
今回の「MKZ4」発売を記念して、改造ミニ四駆製作キット「MKZ4」と「MKZ4WK」、そして「ワイルドミニ四駆」本体をセットにした「スペシャルパック」が税別8,888円で販売される。車種は「ニッサン テラノ '93 パリダカ仕様(チーム NOK JATCO)」、「トヨタ ハイラックス モンスターレーサー Jr.」、「ランチボックス Jr.」がそれぞれ各30台ずつ(限定販売)。Cerevo直販Webストアでは既に予約を受け付けている(発送は7月中旬)。
このほか、教育関係者向けに、「MKZ4」20個と「MKZ4WK」1個をセットにした「アカデミアパック」が販売される。アカデミアパックの価格は税別9万9980円。
なお、今年8月より東京都・秋葉原の「DMM.make AKIBA」において、「MKZ4」を利用したワークショップが常設されるという。第1回目は8月20日で、予約開始日などの詳細は、「DMM.make AKIBA」のFacebookページならびにCerevoのWebサイトにて7月中旬に公開される。毎回、開始10分ほどで予約が埋まる人気ワークショップなので、参加希望者は上記サイトをマメにチェックして欲しい。