日本電気(NEC)は6月30日、新規ナノ炭素材料となる繊維状カーボンナノホーン集合体「カーボンナノブラシ」を発見したと発表した。
同成果は、NEC IoTデバイス研究所 弓削亮太主任研究員らの研究グループによるもので、6月1日付の米国科学誌「Advanced Materials」に掲載された。
カーボンナノホーンは、NEC 中央研究所 飯島澄男特別主席研究員が1998年に発見したナノ炭素構造体で、直径2~5nm、長さ40~50nmの角状の形をしている。これまでカーボンナノホーンは、直径100~300nmの放射状に延びた球状の集合体(球状CNH集合体)として作製されてきたが、今回、同研究グループが発見したカーボンナノブラシは、カーボンナノホーンが、丸棒ブラシのように放射状かつ繊維状に細長く伸びて集合した形状となっている。
従来の球状CNH集合体は、室温常圧下において炭素棒のターゲットに強いレーザを照射するレーザアブレーション法で生産されているが、今回、同研究グループは、このターゲットを鉄触媒を含む炭素棒に変更したことで、カーボンナノブラシの作製に成功。同社は現状、研究用途で1g/日程度のカーボンナノブラシを製造しているというが、球状CNH集合体の大量製造技術がそのまま適用可能であるため、1kg/日を早期に実現可能であるとしている。
導電性、分散性、吸着性といった3つの特性を兼ね備えていることがカーボンナノブラシの特徴だ。カーボンナノブラシは、細長い繊維状の構造内に電子が流れるため、従来の球状CNH集合体の10倍以上の導電性を持っている。また、球状CNH集合体と同様に水や溶媒への分散性が高く、凝縮しにくい。さらに、筒状構造内の微細なスペースにさまざまな物質を内包することができるため、高性能な吸着材として利用できるうえ、酸化処理を行いカーボンナノホーンの表面に孔を開けることで1700m2/gの比表面積を実現している。
これらの特性により、センサやアクチュエータの応答速度向上、蓄電池やキャパシタの出力向上、ゴムやプラスチック複合材の導電性向上をはじめとする幅広い分野への応用が期待される。
NEC IoTデバイス研究所 津村聡一所長は、「今後はまず、大学との連携によって詳細な生成機構を解明し、材料メーカと連携し量産化技術を開発していくべきだと考えている。実証に向けたデバイス開発やアプリケーションの開拓も並行して進めていきたい」と説明しており、2017年度を目途にサンプル提供を開始する意向を示している。
また飯島特別主席研究員は今回の成果について「カーボンナノホーンは電気を溜めることができるが、それを取り出すのが難しいところに課題があった。カーボンナノブラシは、ナノホーンをうまくつなぎ合わせたことで高い導電性を実現できている。ナノブラシは、ナノチューブとナノホーンの良い特徴を併せ持っているので、導電性をもった複合材料などの分野で注目されるのでは」とコメントしている。