政府は、東海地震に備えた大規模地震対策特別措置法(大震法)の適応範囲を南海トラフ巨大地震の想定範囲にまで拡大することを含め東海地震対策の見直しを検討する。東日本大震災後の地震研究などで東海地震が単独で起きる可能性より東南海、南海を合わせた三つの地震が連動する南海トラフ巨大地震が発生する可能性が高いとの見方が強まったことを受けての措置。中央防災会議主管官庁の内閣府が28日、大震法の見直しを議論する作業部会設置を決めた。
大震法は、静岡県の駿河湾周辺を震源とするマグニチュード(M)8級の地震が想定される東海地震に備えた対策を定めている。東海地震の直前予知は可能、との前提に立った法律で1978年制定された。27カ所に設置された「ひずみ計」の監視観測データが基準を超えると、気象庁が判定会を開いて地震の直前の現象かどうかを検討、「前兆すべり」と判断した場合は首相が警戒宣言をする。被害を極力軽減し、混乱を防止するために新幹線などの公共交通機関や銀行業務を一部停止するなどの規制を行う仕組みだ。現行法の対象は、国が「地震防災対策強化地域」に指定した静岡など8都県157市町村。
一方、東海沖から九州沖の太平洋海底に延びるトラフ(溝状の地形)に沿って発生する可能性がある南海トラフ巨大地震については、東日本大震災後の2013年に南海トラフ巨大地震特別措置法が施行された。大震法と異なり直前予知を前提としていない。14年に29都府県707市町村が「防災対策推進地域」に指定され、対象自治体に防災計画や津波避難対策などを求めている。同巨大地震は最大M9級の激震が想定され、政府の試算では被害は最悪シナリオで死者が30万人を超え、経済被害は200兆円を上回るとされている。
内閣府などによると、新たな作業部会は政府の中央防災会議の下に設置し、地震研究者や自治体関係者らで構成される。今年度内に現行の大震法改正の方向性をまとめる予定という。東日本大震災の後、「地震の正確な予知は困難」と指摘する研究者が増え、大震法見直しの必要性が指摘されていた。作業部会では、大震法の対象を南海トラフ巨大地震の被害想定域に拡大するか、あるいは「直前予知は可能」との大震法の前提自体を見直すか、など大地震、巨大地震に対する考え方と対策の基本から議論される見通しだ。
関連記事 |