半導体市場調査企業である米IC Insightsは6月22日(米国時間)、パワートランジスタの世界市場の今後の成長予測を発表した。産業システム、自動車、家電、IoT機器などのエネルギー効率向上のための需要増が期待できるため、今後着実に成長すると予測している。
パワートランジスタは、現在210億ドル規模の世界ディスクリート半導体市場の中で過半の120億ドルを占めている。その市場は、2008~2009年の景気後退から2010年には急回復して以来、多少の上昇・下降を繰り返しつつ、全体には上昇基調にある(図1)。
ただし、上昇基調にあるとはいうものの、実は過去5年のうち、3年は下降している。その一因は経済の不確実性が継続していることにあるが、これに関連してシステムメーカーが需要の弱体化の兆しが見えるやいなやパワー半導体の注文を迅速にキャンセルしてしまうためでもある。
今後5年間の年平均成長率は4%
パワートランジスタの売上高は、2015年に7%低下したが、2016年から緩やかに回復し、2016年は1%以上の成長となり124億ドルに達するという予測のほか、2017年は前年比3%成長となる128億ドル、2018年は5%成長となる135億ドルと、2011年の史上最高レベルまで回復することが見込まれている。
同社では、その後も成長が期待されており、2015~2020年の5年間の年平均成長率は3.9%で、2020年には148億ドルに達するとも予測しているほか、この年間成長率は過去10年間(2005年から2015年)に記録されている年間成長率4.%とほぼ一致しているが、パワートランジスタの今後は以前と比べて、データセンター、産業機器、自動車、家電、ポータブル電子機器、IoTに向けてエネルギー効率の向上が求められ、需要が増え続けることから、ボラティリティははるかに小さいともしている。
また数量ベースでは、今後年平均で6.5%成長し、2020年には2015年の520億個に対して約4割増となる711億個に達すると予測している。
200V以上の高耐圧パワーFETが高い伸び
さらに同社では、2010年代後半に最も成長するパワートランジスタ製品カテゴリは、高耐圧電界効果トランジスタ(FET)および絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)モジュールと予想している。高耐圧(200V以上)FETの売り上げは2015~2020年に年平均4.7%で成長し、2020年には24億ドルに達する。一方のIGBTモジュールは、年平均4%で成長し、2020年には32億ドルに達する。その他、低耐圧(200V未満)パワートランジスタは、年平均3.7%で成長し2020年に56億ドルに、ディスクリートIGBTトランジスタは年平均3.8%で成長し11億ドルに、バイポーラ接合トランジスタは年平均3.1%で成長し8億9000万ドルに達すると予測している。