太平洋セメントは6月23日、北海道立総合研究機構 産業技術研究本部 工業試験場(道総研工業試験場)の協力のもと、3Dプリンタによる積層造形が可能で、高い耐熱性を備えた鋳型向け無機材料の開発に成功したと発表した。

同成果は9月に開催されるる日本鋳造工学会全国講演大会において発表される予定。

道総研工業試験場ではこれまで、3Dプリンタを用いた鋳型製造の検討を行っており、耐熱性に優れるセメント系材料の適用性が高いことを見出していた。しかし、溶湯温度が1200℃を超える金属の鋳造では、鋳型材料の成分に起因したガスの発生によるブローホール欠陥や、球状黒鉛鋳鉄における黒鉛球状化の阻害に伴う表層欠陥といった課題があり、実用化する上での大きなハードルとなっていた。

今回の開発では、太平洋セメントが培ってきたセメントをはじめとする無機材料の特性や反応性に関する知見を応用し、成分や構成を検討。その結果、3Dプリンタでの造形に適する抗折強度を発現するとともに、材料に由来する不具合の発生を抑制する無機粉末の開発に成功した。開発した無機粉末を用いて3Dプリンタで鋳型を作製し、約1600℃まで溶湯温度を高めた鋳鉄溶湯を鋳込んだところ、ガスによる欠陥を生じることなく、表面が滑らかな鋳物となり、実用レベルにあることが確認された。

同無機粉末と3Dプリンタの組み合わせにより、溶湯温度の高い金属鋳造用の鋳型をはじめ、複雑な形状を有する特殊な鋳型等への広範な利用が期待される。太平洋セメントは今後、サンプル提供を行いながら道総研工業試験場と共同で無機粉末のさらなる性能向上と最適化を図り、早期の上市を目指すとしている。

ブローホール欠陥が生じた鋳物(左)とブローホール欠陥が無い鋳物

開発した無機粉末を用いて3Dプリンタで造形したT型管の鋳型

1600℃の鋳鉄溶湯を鋳込んで得た鋳物の外観。滑らかな表面を実現した。