Marvell Semiconductorは6月22日、都内で会見を開き、同社が注力する車載イーサネットへの取り組みについて説明を行った。
Marvellというと、かつてIntelからXScaleプロセッサを買収したことなどで知られるファブレスベンダだが、実はストレージ分野に向けたデバイスを主軸に、IoTなどのネットワーク、モバイル/ワイヤレス関連などで強みを有している。
そんな同社は、自動車のネットワーク化に向けた対応を長年進めてきており、例えば2011年には車載向けWi-Fi技術の提供を開始したほか、2015年には車載向け1000BASE-T1(シングルペア)ギガビットイーサネット物理層(PHY)トランシーバのサンプル出荷を開始している。「こうした製品の多くは、他市場に展開していた製品の車載対応というわけではなく、はじめから自動車向けとして開発されており、他社に比べて車載で求められる高いEMI耐性や信頼性、低消費電力性能などを提供することを可能にしている」とMarvell SemiconductorでDirector,Automotive Solutions Groupを務めるAlexander Tan氏は語る。
また、そうした車載ネットワークへの取り組みとして、2016年4月にはドイツの車載市場に向けたプレゼンス拡大を目指し、約50名の専属エンジニアが車載イーサネットの研究開発を行う「Automotive Center of Excellence(ACE)」を開設している。
「我々の目標はOEMやティア1メーカーらと共に次世代の自動車で必要とされるネットワーク製品を開発することであり、現在、1000BASE-T1(シングルペア)や100BASE-T1(シングルペア)、マルチペアイーサネット/FEFAといった各種のイーサネット技術のほか、物理層(PHY)デバイス、マルチポートスイッチ、エンドノートSoCなど、トータルソリューションとして実用化に向けた取り組みを進めている」とのことで、例えば、2016年7月に正式にIEEEにて正式に承認される予定のIEEE 802.3bw準拠の1000BASE-T1規格製品については、「他社に先行して我々が製品サンプルの提供を開始したこともあり、世界中のティア1やOEMと連携して、テクニカルアドバイザー的な役割もこなしながら、協力関係を高めている」とする。
車載ネットワークとしてはCANやLINなどが長年用いられてきており、そもそもイーサネットが必要か、という疑問があるが、同氏は、「インフォテインメント分野やADASといった新たなアプリケーション、特にリアシートでの動画視聴に向けた高速伝送や、ナビゲーションなどの高画質化などへの対応ニーズは強く、コンテンツデータの肥大化に合わせて、ネットワークの高速化ニーズも高まっているし、イーサネット技術そのものは枯れた技術であり、かつオープンな規格であるため、ハイエンドでもローエンドでも数世代にわたって技術適用が可能。加えて、低コストな非シールドケーブルを利用することができるため、最適な技術として考えられている」と説明する。
また、ギガビットの伝送速度が必要か、という点についても、「複数の4Kコンテンツを1本のケーブルで転送することが可能になる。例えば自動運転が現実となった社会において、運転する必要がなくなり、車内で高品質な動画を楽しむ、といった変革が生じる可能性もあるし、リアルタイム性が求められるアプリケーションへの対応も容易になる」とし、あくまで未来の自動車市場での活用を前提にしたものだとする。
そのため、ギガビットイーサネットの適用分野も、まずはインフォテインメントやADASといった限定的な分野から、とはするもののの、数年レベルでのリアルタイム性や安全性などに対する評価の結果、真に安全である、ということが確認されれば、リアルタイムで多量のデータ処理が求められる完全自動運転車(レベル4)や、自動車のIoT活用(クラウド連携による各ECUや車体状況の把握など)の進展によるIPネットワークへの対応などを目的に、ボディやシャシー、パワートレーンなどといった分野への搭載も「次のステップ」として考えられるとしており、ティア1やOEMなどと協力して、そうした技術の実現に向けた取り組みも日本も含めて、世界的に展開していくことを強調していた。