エフセキュアは6月7日、都内で「フィンランドITの夕べ ~ IoT時代のセキュリティを語る」を開催した。エフセキュアの創業者・会長(兼ノキア会長)であるリスト・シーラスマー氏が「サイバーセキュリティ」「日本とフィンランドの起業文化」「企業の変革」の3つのトピックについてスピーチを行った。

エフセキュア兼ノキア 会長のリスト・シーラスマー氏

最初にシーラスマー氏はサイバーセキュリティについて触れ「セキュリティに重要なのは可視化だ。ヘルスケアやロジスティクスなど、今後10年で成長する分野は将来的に脆弱性があり、攻撃のターゲットになりがちだ。攻撃する側は、どのシステムを攻撃すれば最大の損害を与えられるか考えているが、それに気が付かない人が多い。そのような攻撃を防御した後、われわれの次のゴールは誰がネットワークを侵害しているのか検知することだ。全国レベルでリソースを集めてでも、迅速に見つけることができなければならない」と指摘した。

そのような状況を踏まえ「現在、企業は自分たちが侵害を受けていることに気付くことに数年かかることがしばしばある。数年間、機密情報が企業のネットワークの外へと流出しており、その期間を数分もしくは数十分まで減らさなければならず、われわれが投資する重要な分野の1つだ」と同氏は訴えた。

日本とフィンランドの起業文化、そして企業の変革

続いて、同氏は日本とフィンランドの起業文化の説明を行った。2007年にヘルシンキ工科大学でスタートアップ企業とアントレプレナーシップ(起業家精神)について教える講義において同氏は「600人ほどの聴衆に『あなたがたの中で起業家になろうと考えている人が何人いますか?』と質問した結果、3人の手が挙がり、うち2人は外国人、フィンランド人は1人だけだった。その後、起業家向けのイベントであるSlushが誕生した。起業家達や若い人達により運営されており、ここ数年はヨーロッパ最大のスタートアップイベントに成長し、昨年は17000人の人々がヘルシンキのイベントに集まった。また、2年前に初めて東京でSlush Asiaを開催し、有名な日本人起業家も参加するようになった。昨年は中国で初めてSlush Chinaを開催しており、両イベントに関わった人達は成長するイベントを作り上げた」と同氏は語る。

会場風景

そして、Slushを通じて10年前を比較し「私にとってどの国も変わることができ、アントレプレナーシップを持つことができるということの証明となった。現在、もしフィンランドの大学で生徒に『起業家になろうと考えている人はいますか?』と質問すれば、半数以上の学生が手を挙げるだろう。これは10年程前は600人中3人しか手を挙げなかったことからの大きな変化だ」と述べた。

そのような状況を踏まえ同氏は企業の変革について「私は日本が同様の変化を遂げると信じている。フィンランドと日本は少子高齢化、成長の減速、企業や政府の厳格なシステムなど多くの課題を共有しており、私は両国がこれらの困難を機会として課題に目を向けなければならないと考えている。つまり、これらを解決することがグローバルなスケールで、より高い競争力を有した国へと押し上げる課題と考えることもできる。日本がロボット工学、インテリジェントセンサー、高度なモバイルネットワーク、人工知能を用いた素晴らしいヘルスケアサービス、万人のための高齢者介護を実現すると考えれば、フィンランドや日本と同じ人口ピラミッドを持つ、そのほかの国は日本に追従する」と日本に対する期待を寄せた。

最後に同氏は「米国に拠点を置く、ある著作家は『私たちの中には、世界がどういうものかを見て、なぜ?と尋ねる者がいる一方、それまでになかったものを夢見て、なぜないの?と尋ねる者もいる』という。私が常に考えるのは、いつも世界を見て最初にそれがどのように動いているかを考える人のことだ。そのような人たちは『どうして?』と尋ね、世界の動きを理解したいと考えており、観察し、学ぶ。しかし、その時まだ実現されていないものを夢見て、『なぜないのか?』と考える人達がいる。それが起業家だ。彼らは製品やサービスの隙間を見つけ、最初に抱く感情が『なぜないのか?』なのだ。そして私たちがフィンランドで、そして日本で今、世界を見ることに必要な方法でもあるのだ」と説いた。