ターボ機械の分野では現在、さまざまな課題に直面している。そう語るのは、ANSYS Canadaで産業機械や回転部分のある機械にフォーカスするPrincipal Technical Services Engineerを務めるBill Holmes(ビル ホルムズ)氏だ。
どういった課題があるかと言えば、例えば工場などでの二酸化炭素排出量の削減や、航空機や自動車における燃費効率の向上などが挙げられる。同社はそうした回転する機械を扱うすべての業種に対してシミュレーションツールの提供をおこなってきたが、主な産業としては、「航空宇宙」におけるエンジンや補助電源、冷媒圧縮機など、「自動車」におけるターボチャージャーやファンなど、「Heating, Ventilation, Air Conditioning(暖房・換気・空調)」における冷媒圧縮機など、「医療」における心臓ポンプ、「石油・ガス」におけるガスタービンや蒸気タービンなど、そして「発電」におけるガスタービンや風水車など、といった6分野があるとする。
「回転する機械の種類はさまざまだが、最適化を図るために、迅速かつ忠実なシミュレーションを実現する必要がある。それを実現するために、初期のサイジングから、複数の物理モデルを組み合わせた空力弾性振動解析といった複雑なものまで幅広く対応しており、実際に深い洞察を得ることができるようになっている」(Holmes氏)とのことで、例えば独Siemensでは、ガスタービンの開発において、コンプレッサがストールすることがあり、それを予測するためにCFDソリューションを用いて、シミュレーション結果と実際の実験結果の比較を行うことで、複雑な試験環境を構築して比較しないで問題を解決することができたという。
同氏は、「どういった機械を使う企業であっても、シミュレーションを活用することで、より良いものへと改善することが可能になる」と語っており、今後、環境規制がさらに厳しくなるであろう自動車分野、特に北米地域に向けたターボチャージャー搭載車の開発や、エネルギー問題が深刻化していく発電関連分野では、特に活用していってもらえれば、との期待を覗かせる。
また、医療分野の心臓ポンプのような小さな回転機械の需要については、「医療の分野でもシミュレーションの活用は増えてきたが、そのほとんどはターボは関係ない。小型の回転機械の分野であれば、エレクトロニクスの分野がドローンなどが登場しており、期待ができる。主要産業分野を現状6つとしているが、こうした産業が伸びてくれれば、7つ、8つと増やしていけると思う」と言及したほか、エレクトロニクス化により、回転部分が減ってくるのではないか、という懸念については、「電気自動車なども登場してきているので、そう思うのも分かる。ただし、我々ANSYSとしては、そうした分野の問題を解決できるツールも取り揃えており、将来的にどちらに進んでも問題はないと思っている」と、すでに対応が進んでいることを強調した。
今後のツールのバージョンアップについては、「現状で十分、という認識はない」とし、研究開発にかなりのリソースを割いており、より良いものへと進化させていくことを惜しまずに進めていくことで、市場のニーズに応えていきたいとする。
2017年の初頭に次世代バージョン(ANSYS 18)のリリースが予定されているが、新たに流体解析向けに「Harmonics Analysis Method」が追加される予定だという。現行のANSYS 17でもβ版として提供しているが、これが正式版として提供されることになるという。
なお、日本市場について同氏は、「ターボ機械を活用している企業に向けて、我々は高い忠実性を持つツールを今後も提供していくことを約束する。それは流体、メカニカル、電磁波などを含む形で、かつ使いやすい環境として提供していく。シミュレーションツールや複雑な作業を容易にするために存在するものだ。我々のCEOはシミュレーションを民主化する、という誰でもシミュレーションが使える世の中が来ることを目指している。そうした意味でも、これからの進化に期待してもらいたい」とコメントしてくれた。