米Scalityの日本法人であるスキャリティ・ジャパンは6月16日、都内で記者会見を開き、オブジェクトストレージ対応のSDS(Software-Defined Storage:ソフトウェア定義型ストレージ)の最新版「Scality RING v6.0」とAWS S3に準拠したオープンソースのオブジェクトストレージ製品「S3 Server」の提供を開始したことを発表した。
冒頭、米Scality President兼COOのアーワン・メナード氏は「近年、ますますSDSは重要になっている。それはデジタルエコノミーにより生成される大量データに対応できる唯一の方法だからだ。2016年1月にIDCが発表したデータ属性別に見たSDSの出荷容量予測(2014~2019年)によると、オブジェクトカテゴリーの年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は49.5%となっている。オブジェクトが急激に成長している背景には、非構造データ格納する方法としてオブジェクトが最適であり、今後デジタルエコノミーで生成されるデータの主体が非構造データで構成されている点がある」と述べた。
ADとAWS IAMに対応しているSDS「RING v6.0」
RING v6.0は、AWS S3に対応したオブジェクトストレージのSDS製品としてマイクロソフトのActive Directory(AD)と、Amazon Web Services (AWS)のIdentity and Access Management(IAM)にも同時に対応している。これにより、エンタープライズ環境において、S3ベースのアプリケーションの導入を実現する。
同社によると、オブジェクトストレージ技術は大規模パブリッククラウドまたはプライベートクラウドなど、圧倒的な拡張性や性能の向上が必要とされる領域で導入・浸透が進んでおり、RING v6.0は各国のベータカスタマーがテストし、効果を実証しているという。
メナード氏はRING v6.0について「オブジェクトストレージの機能にフォーカスして強化しており、特にAmazon S3のインタフェースについて機能強化・改善を図った。このインタフェースはオブジェクトストレージ用のAWSのインタフェースと同じものだ。また、コンプライアンス機能を強化した。SEC ルール17a-4 に対応した、データファイルの書き換えや消去が不可能なWORM(Write Once Read Many)機能でファイルを保管できるようにしたので、銀行やヘルスケア分野での利用にも耐えうる。さらに、多くの企業で利用されているマイクロソフトのActive DirectoryとAWS上で認証とユーザー管理を行うAIMに対応したことで、ユーザー企業が求める認証およびユーザー管理に対するニーズにこたえることができた」と説明した。
S3 API準拠のオープンソースオブジェクトストレージ「S3 Server」
S3 Serverは、Scality RINGのS3ストレージ機能をオープンソースとして提供する製品。Dockerイメージとして配布されるため導入が容易で、アプリケーション開発者は手元の環境で気軽に開発を行うことが可能だという。
また、ストレージ管理などを行うシステム管理者にとっては、アプリケーションを開発してから本番環境での稼働までの時間を短縮できる。S3 Server上で開発されたコードは、特別な変更を加えることなく、そのままオンプレミスで運用に移行することも、AWSまたはS3に対応したパブリッククラウド上で運用をすることもできる。
メナード氏は「非構造データは新しいアプリケーションから生成されるデータのため、開発者は新しいオブジェクトストレージについて理解を深める必要がある。新しいアプリケーションを開発している場合、大規模なインフラをプロビジョニングするのではなく、より簡単に使うことができるストレージが求められる。それに対するソリューションがS3 Serverで、S3のインスタンスを無償で使うことができる。実装先はPCとサーバ、データセンターの3種類から選択でき、迅速かつ容易に実装を可能としている。また、RINGなしで使えるスタンドアロンの製品であり、開発者向けのS3として提供するストレージとしてオンラインで使用できる」とS3 Serverの優位性を強調した。
Node.jsで開発されている点も特徴の1つで、高速なバケットリスティングを実現しており、S3 APIとの互換性があることからアプリケーション開発者はS3固有のバインディングやJava、.NET、Javascripなどでも開発を進めることが可能。加えて、Docker volumeを利用しているため小規模の開発から、数百TBクラスの大規模デプロイメントができるという。
サポートはDocker Hub、GithubまたはScality S3 Server Portalにて、コミュニティベースの無償サポートまたは有償のエンタープライズサポートが提供されており、有償サポートは月額950ドルのサブスクリプションモデルとなっている。
最後に、スキャリティ・ジャパン 代表取締役の江尾浩昌氏が「昨年3月に法人を設立して以来、現在の国内顧客数は13社に達しており、PB規模のデータを保有する通信事業者のメール系ビジネスが引き続き堅調だ。メール以外の用途開拓にも注力しており、複数の映像配信事業者で導入が進行している。2015年はHPEのApollo Serverとの国内正式販売を開始し、ネットワンシステムズが国内1次代理店として販売を開始したほか、デルとグローバルでの業務提携を発表した。また、伊藤忠テクノソリューションズの『Custom Order Storageサービス』にてScalityの取り扱いが開始された。2016年3月にはパートナーのエンジニア、セールス担当者向けのトレーニングプログラムを開始しており、今後もパートナーの支援体制の拡充に取り組んでいく」と国内販売・支援体制への意欲を語った。