IDC Japanは6月14日、国内情報セキュリティ市場の2015年の実績と2020年までの予測を発表した。
ソフトウェア製品とアプライアンス製品を合わせたセキュリティ製品の市場は、2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)が4.7%で、市場規模は2015年の2,699億円から2020年には3403億円に拡大するとIDCでは予測。また、コンサルティングやシステム構築、運用管理、教育/トレーニングサービスを含むセキュリティサービスの市場は、2015年~2020年のCAGRが5.2%で、市場規模は2015年の6,811億円から2020年には8,757億円に拡大すると予測している。
IDCでは、セキュリティ市場をセキュリティソフトウェア市場とセキュリティアプライアンス市場を合わせた「セキュリティ製品市場」と、「セキュリティサービス市場」のセグメントに分類して調査/分析を行っている。このうち、2016年の国内セキュリティソフトウェア市場は、クラウドやモビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術を活用した第3のプラットフォームへの移行と標的型サイバー攻撃の対策需要によって、セキュリティソフトウェア市場全般でニーズが高まり、前年比成長率は4.3%と予測。
2017年以降は、2019年に開催されるラグビーワールドカップや2020年に開催される東京五輪での重要な社会インフラへのサイバー攻撃の対策需要と、マイナンバー法や改正個人情報保護法の法規制による個人情報への保護対策強化により、同市場に対する需要が拡大するとみている。このことから同市場の2015年~2020年におけるCAGRは4.8%で、市場規模は2015年の2,246億円から2020年には2,838億円に拡大すると予測している。
2016年の国内セキュリティアプライアンス市場は、標的型サイバー攻撃の対策需要が引き続き高く、多層防御を備えたUTM(Unified Threat Management)が拡大するが、ファイアウォール/VPN(Virtual Private Network)はUTMへの移行が進み軟調であることから、前年比成長率は2.4%と予測。2017年以降は、セキュリティソフトウェア市場と同様、2019年に開催されるラグビーワールドカップや2020年に開催される東京五輪での重要社会インフラへのサイバー攻撃の対策需要と、マイナンバー法や改正個人情報保護法の法規制による個人情報への保護対策強化によって、同市場に対する需要が拡大するとみている。同市場の2015年~2020年におけるCAGRは4.5%で、市場規模は2015年の454億円から2020年には566億円に拡大すると予測している。
2016年の国内セキュリティサービス市場は、標的型サイバー攻撃の対策需要よって拡大するUTMやIDS/IPS(Intrusion Detection System/Intrusion Protection System)、サンドボックスエミュレーション技術を活用した非シグネチャ型外部脅威対策製品向けの導入/構築や監視などのセキュリティサービスのニーズが高く、前年比成長率は4.3%と予測。2017年以降は、オンプレミス環境とクラウド環境の両方を組み合わせたハイブリッド環境の進展によって境界防御によるセキュリティ対策が難しくなってくることから、第3のプラットフォームのテクノロジーで構築されたクラウド型セキュリティゲートウェイを中核としたセキュリティシステムへのニーズが高まり、それに伴い導入/構築/運用サービスの需要が拡大するとIDCではみている。同市場の2015年~2020年におけるCAGRは5.2%で、市場規模は2015年の6,811億円から2020年には8,757億円に拡大すると予測している。
ソーシャル技術、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、クラウドという第3のプラットフォームテクノロジーによって実現されるデジタル変革によって、ITシステムはオンプレミス環境とクラウド環境の両方を組み合わせたハイブリッド環境へと変化することで、社内イントラネットとインターネットの境界がなくなり、境界防御が難しくなる。また、社内/社外に関わらずさまざまなエンドポイントデバイスから情報資産を活用する機会が多くなり、社外からの情報資産の利用は、社内イントラネットと同様のセキュリティポリシーでアクセスさせる必要がある。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの登坂 恒夫氏は「セキュリティソリューションのサプライヤーは、オンプレミスのセキュリティシステムとクラウド型セキュリティゲートウェイソリューションを組み合わせたハイブリッドソリューションを訴求すべきである。これによって、社内イントラネットとインターネットとの境界がなくても、セキュリティゲートウェイを経由することで防御が可能となる」と分析している。