重症になりやすい心原性の脳梗塞発症と密接な関係がある血液の固まりやすさ(血液凝固能)を正確に判定する方法を東京医科歯科大学の研究グループが見つけ、このほど研究成果を米科学誌に発表した。臨床の現場に普及すれば信頼性の高い発症リスク診断に役立ちそうだ。

(図は東京医科歯科大学研究グループ提供)

研究グループなどによると、脳梗塞にはいくつかのタイプがあり、心原性脳梗塞は心臓の中にできた血栓が脳内に移動して脳血管に詰まって発症する。重症になることが多い。血液凝固能には個人差があり、凝固能が高いほど血栓ができやすく心原性脳梗塞を発症するリスクが高まる。このため凝固能を正確に調べることができれば発症リスクを正確に判定できる、という。

東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科の笹野哲郎(ささの てつお)准教授と同大学医歯学総合研究科心臓調律制御学の平尾見三(ひらお けんぞう)教授らは、血液が凝固する過程では赤血球が凝集して血液の「誘電率」が変化することに着目した。誘電率は分子内の電荷が正極(プラス)と負極 (マイナス)に分かれる分極の強弱を示す値。笹野准教授らは内科学、血液検査学の研究者と共同し、血液の誘電率を計測することにより、凝固能を高感度で判定できることを、独自の実験を通じて明らかにした。

今回、誘電率測定には「誘電コアグロメーター」と呼ばれる実験用試作機(ソニー株式会社製)が使用された。電極が付いたカートリッジの中に血液を入れ、交流の電場を加えることで手軽に誘電率を計測できる、という。

心原性脳梗塞の発症リスクを診断する方法として、これまで心不全や高血圧、糖尿病、脳梗塞などの既往の有無を点数化した「CHADS2 スコア」と呼ばれる方法があったが、診断の信頼度に限界があると指摘されていた。また、これまでの血液凝固能検査の多くは血漿だけを調べるため血球を含めた血液全体(全血)の凝固能を正確に測ることは難しかった。

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