豊橋技術科学大学(豊技大)は6月9日、プルシアンブルー(PB)・プルシアンブルー類似体(PBA)を電極材料に用いて、カルシウムイオン電池(CIB)の充放電試験を行い、カルシウム系有機電解液中では、CIBの充放電サイクル性能が優れていることを示したと発表した。
同成果は、豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系 東城友都助教らの研究グループによるもので、4月28日付けの英国科学誌「Electrochimica Acta」オンライン版に掲載された。
CIBは理論上、リチウムイオン電池(LIB)の2倍の容量を示すため、次世代電池として注目されている。またCIBは、カルシウムの埋蔵量がリチウムに比べて多いことや融点が高いことから、LIBよりも低価格、高安全性な電池であることが考えられる。しかしながらCIBの実現には、カルシウムイオン(112pm)がリチウムイオン(76pm)よりもイオン径が大きいために、カルシウムイオンを可逆的に挿入・脱離できる電極材料が少ないという課題がある。
これまでにカルシウムイオンと同程度のイオン径であるナトリウムイオンを用いて、PBA電極の電気化学特性が有機電解液中・無機電解液中で評価されており、ナトリウムイオンの可逆的な挿入・脱離が確認されていたため、今回、同研究グループは、ナトリウムイオンの代わりにカルシウムイオンを用いて、PBA電極の性能評価を行なった。 この結果、可逆容量は40-50mAh/gと理論容量の半分程度となったが、クーロン効率、すなわちサイクル性能は、3サイクルに以降に約90%で一定となった。この優れたサイクル性能について、X線回折およびX線光電子分光法により解析したところ、PBAの壊れにくい構造と良好な電荷バランスに由来していることが明らかになった。
同研究グループは、PBA電極の可逆容量の向上については更なる研究が必要であるとしており、今後はCIBの材料研究を引き続き進めていく予定だという。