国立精神・神経医療研究センター(NCNP)とヤクルト本社は6月9日、腸内の善玉菌が少ないとうつ病リスクが高いことを明らかにしたと発表した。
同成果は、NCNP 神経研究所 相澤恵美子研究員、功刀浩部長、ヤクルト本社 辻浩和室長らの研究グループによるもので、5月24日付けのオランダ科学誌「Journal of Affective Disorders」オンライン速報版に掲載された。
今回の研究では、43人の大うつ病性障害患者と57名の健常者を対象に、被験者の便を採取して、ビフィズス菌と乳酸桿菌(ラクトバチルス)の菌量を、16S rRNA遺伝子の逆転写定量的PCR法によって測定し比較した。この結果、ビフィズス菌およびラクトバチルスの菌数のそれぞれの単純な比較では、大うつ病群は健常者群と比較してビフィズス菌が有意に低下しており、ラクトバチルスの総菌数も低下傾向が認められたという。
ROC解析(Receiver Operating Characteristic curve:受信者動作特性曲線)によって、大うつ病群と健常者群とを区別する最適の菌数(カットオフ値)を求めたところ、ビフィズス菌がカットオフ値(便1gあたり109.53個)以下の菌数だったのは大うつ病群で49%(21/43人)であったのに対し、健常者群では23%(13/57人)。ラクトバチルスでは、カットオフ値(便1gあたり106.49個)以下の菌数であったのは大うつ病群で65%(28人/43)、健常者群では42% (24/57人)となった。したがって、ビフィズス菌や乳酸桿菌の両者とも菌数が低いとうつ病リスクが高くなることが示唆されたといえる。
また、被験者のうち、過敏性腸症候群を合併している人の割合が、健常者群では12%であったのに対し、大うつ病群では33%と、大うつ病群では健常群に比較して有意に多いこともわかった。さらにビフィズス菌やラクトバチルスの数が上記のカットオフ値より低い人は、過敏性腸症候群症状をもつリスクが高いことも明らかになった。
同研究グループは、今回の結果について、乳酸菌飲料やヨーグルトなどのプロバイオティクスの摂取がうつ病の予防や治療に有効である可能性が考えられると説明している。