東京大学大学院情報理工学系研究科ソーシャルICT研究センターは6月9日、産学で連携したライフスタイル個人認証に関する5万人規模の大規模実証実験を2017年1月に行うと発表した。ライフスタイル認証とは、スマートフォンやウェラブル端末によって収集されたデータを活用する個人認証技術。

於:小柴ホール「ビックデータを活用した 社会基盤の変革と実践」シンポジウム 松浦特任教授 「今回の認証技術はセキュリティ業界だけでなく社会基盤全体に影響を与える」講演

企業のWebサイトの77%において1種類の認証要素であるID/パスワードを利用している調査結果が出ているが、パスワードはリスト攻撃といった複数のリスクを抱えている。そこで、同センターは、新たな要素を柔軟に追加が可能な仕組みを備え、複数要素を用いた認証技術を確立することで、こうした課題を解決しようとしている。

ライフスタイル認証は、スマートフォンやウェアラブル端末などのユーザーが所持する端末や、防犯カメラやIoTデバイスといった周辺センサーが収集した情報を利用することで、ユーザーの動作がなくても認証を行うことを可能にする。この技術により、ユーザーにとっての認証の手間を軽減し、安全性への柔軟な対策も可能となる頑健な(ロバストな)認証基盤を実現するという。

同センターはこの研究に3年がかりで取り組んでおり、今回の大規模実証実験を通して技術の発展のみならず社会インフラの革新を目指す。実証実験には、マンガワンやShufoo!といった多数の利用者がいる商用サービスやオムロンヘルスの活動量計を利用することが決まっており、すでに開始しているサービスを利用することにより、学術的な研究だけにとどまらず実用化の可能性を高めるとしている。