物質・材料研究機構(NIMS)と東北大学は6月8日、酸化亜鉛(ZnO)について、その低摩擦特性を保持したままベアリングボールにコーティングする技術を開発し、ベアリングの摩擦係数を約2/3に低減させることに成功したと発表した。

同成果は、NIMS エネルギー・環境材料研究拠点 後藤真宏主席研究員、情報統合型物質・材料研究拠点 佐々木道子ポスドク研究員、構造材料研究拠点 土佐正弘グループリーダー、東北大学 多元物質科学研究所 栗原和枝教授、粕谷素洋助教らの研究グループによるもので、8月5日に京都で開催される「PRICM-9 国際学会」にて発表される予定。

エンジンなどの駆動機構で発生する摩擦を低減することは、省エネルギー化につながるため重要な技術である一方、エンジンの中の駆動部は高温環境に曝されることから、耐熱性が要求される。同研究グループは、これまでに摩擦低減効果と耐熱性を併せ持つZnOに注目し、ZnOの低摩擦現象が発現する仕組みをナノレベルで解明、結晶配向性を制御することにより、低摩擦のZnOコーティングを作製する基盤技術を実験室レベルで構築してきた。

そして今回、摩擦の低減が特に重要となるベアリングに注目。籠状のサンプルホルダーにベアリングボールを入れて回転させることで、ZnOの低摩擦化に有効な結晶配向性を維持したまま、球状のベアリングボールにコーティングを行う技術を開発した。

さらに小型ジェットエンジンに標準で搭載されている市販のベアリングを用いて、低摩擦性能の実証試験を行った結果、コーティングなしのベアリングに対して、結晶配向性が最適化されたZnOコーティングのベアリングは、その摩擦係数が約2/3に低減していることが明らかになった。そこで実際に小型ジェットエンジンに組み込んで性能試験を行ったところ、通常のベアリングを組み込んだ場合と比較して、その燃料消費量は約1%低下したという。

さらに、FOXコーポレーションと共同で、ZnOコーティングしたベアリングを搭載した災害用の小型ジェットエンジン発電機を開発。総重量が約40kgで、大人2名で運搬可能な重さながら、発電量は最大で8000Wもあり、通常の家庭2軒分の消費電力を賄うことが可能となっている。

今回開発した低摩擦ZnOコーティングは、常温から高温まで、また油中、真空中、大気中において幅広く使用できるため、ベアリングへの応用だけに留まらず、低摩擦化が必要なあらゆる駆動部への応用が期待できると同研究グループは説明している。

ZnO コーティングを施したベアリングボールを組み込んだベアリング

ZnOコーティングベアリングを搭載した災害用小型ジェットエンジン発電機