テクトロニクス社は5月25日、アナログ、任意波形、デジタルパターンのジェネレータを統合した3in1の波形ジェネレータ「AWG4000シリーズ」を発表した。

爆発的なモバイル端末の普及や、モバイル機器によるビデオ視聴の増大などによるネットワークの広帯域化ニーズなど、ワイヤレスネットワークの活用は今後さらに拡大していくことが見込まれている。一方、そうした機器を開発しているエンジニアには、組込機器としては高速かつ正確なサンプリングの実現や、各種センサへの対応、そしてそれらを模擬できる環境の実現といった課題が突きつけられる。また、半導体についてもデバイスの小型・高密度化、プロセッサの高速化、複数のワイヤレスアプリケーションの送受信シミュレーション信号への対応といったものや、通信技術そのものとしてもデジタルIQ変調や柔軟な変調方式、カスタム変調方式とベースバンド・プリ・ディストーション手法などによるアルゴリズム/システム検証などといった課題がある。

しかし、そうした課題を解決するために、おいそれと逐次、機材を買い増しして対応するといったことができる企業は限られており、できる限り開発投資を抑えつつ、課題に対応を図ろうという動きもある。そうした動きの1つとして、計測機器などを1台購入したら、複数のチーム間でそうした機材のシェアができたほうが良い、というものがありつつ、「最もよく使う信号は簡単に生成」、「複雑な波形も柔軟に生成」、「FPGAのメモリ、μプロセッサを駆動するための並列デジタル出力」、「オシロスコープで取り込んだ波形を簡単に再生」、「カスタム波形を簡単に生成」といった課題への対応も同時にしたいというニーズが高まってきているという。

同製品は、そうしたニーズを受けてアナログ、任意波形、デジタルパターンのジェネレータを統合しつつ、簡単なアップグレードによるさまざまなニーズへの対応と、最大4台までの並列同期による複雑な処理への対応といったことまで幅広く対応することを目的に開発されたもの。操作性も柔軟性を持たせることを目的に、10.1型のタッチディスプレイのほか、ボタン/ジョグダイヤル、マウス/キーボードといった操作にも対応している。

AWG4000シリーズ製品「AWG4162」の外観。本体の上に載っている黒いポーチは付属品を収納するもので、デジタイザペンも付属している

また、ベーシック(ファンクション)モードとアドバンス(任意+デジタル)モードの2つのモードとユーザーインタフェースと用意。基本となるベーシックモードは、あらかじめ、いつも使う波形を設定して、すぐに取り出すことが可能なほか、9ユーザーまでのプロファイルを保存できるため、複数人での使いまわしも容易に実現できる。アナログ2chで最高600MHzの帯域(2ch同時で可能)、最高2.5GSps、14ビットの垂直分解能、16kポイントの任意波形、最大5Vp-pの出力増幅(50Ω負荷時)といった性能を提供する。

AWG4000シリーズの概要

一方のアドバンスモードは、アナログ2chに加え、オプションでデジタル16chもしくは32chを提供。サンプルレートはベーシックと変わりはないが、帯域は750MHzとなるほか、こちらもオプションとして最大64Mポイントの任意波形メモリを活用することが可能となっている。

ベーシックモードの実際の画面(左)とアドバンスモードの実際の画面(右)

さらに、奥行き20cm、重さも6.5kgと従来機に比べ小型軽量化を実現。これにより、エンジニア間でのシェアを容易に行うことを可能とした。この小型軽量化について同社では、「ユーザーニーズとして、オシロスコープ並みの筐体に入れて欲しいという声をいただいていたこと、ならびに技術的にも小型化を可能にする方法などが開発されたことから実現できた」としており、多くのユーザーからの要望が同製品を開発する経緯になったとしている。

なお、同製品の本体価格は406万円(税別、3年間保証)。アップグレードオプションはメモリの増設やデジタル出力の増設が主で、出荷前でも出荷後でもアップグレードが可能。購入後のアップグレードについては、客先でのソフトウェアアップデートにより実現されるため、テクトロニクスに渡して、といった日数をかける必要はないという。

AWG4162および各種オプションの価格一覧(いずれも税別)

日本地域では、組込機器ベンダを中心に、IoT機器ベンダや通信端末ベンダなどを中心にワイヤレス通信、レーダ、各種コンポーネントの特性評価と検証といった分野をターゲットに販売を進めていく予定だという。