新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)は5月19日、顧客の攻めのITの実現を支援するITアウトソーシング「NSFITOS」の運用拠点「NSFITOSセンター」の2拠点目を北九州市に開設することを明らかにした。また併せてNSFITOSの中核をなす運用サービス向けに、運用プロセス全体の標準化・自動化を実現した次世代型運用サービス「emerald(エメラルド)」の提供も開始することも明らかにした。

NSFITOSは、顧客のIT業務において、付加価値部分となるコア業務に集中してもらうために、インフラにかかるモノ、基盤、運用といったすべてをまとめてアウトソースすることを可能とするもので、新たなインフラ技術や信頼性の確保などを顧客に代わってNSSOLが行っていくことで、顧客の人的資源のコア業務への集中といったことを可能とする。

NSFITOSの概要

この運用を担当するセンターがNSFITOSセンターであり、1拠点目は2015年4月に東京・三鷹市に開設。2拠点目の北九州市のセンターは2016年7月に開設予定だが、この東西2拠点化によって、BCP(事業継続計画)やDR(ディザスタリカバリ)、相互運用、相互監視といったサービスを東西拠点の連携によって実現していくとしている。

三鷹市と北九州市の2拠点化により、BCPやDR、相互運用などのサービスを東西連携といった形で提供することが可能となる

NSSOL取締役 常務執行役員 ITインフラソリューション事業本部長の大城卓氏

一方のemeraldは「運用の近代化」をコンセプトに提供されるサービスで、同社取締役 常務執行役員 ITインフラソリューション事業本部長の大城卓氏は「運用をテーマとして考えると、きちんとできることは当たり前で、その上でコストをどう下げていくか、サービスの品質をどう向上させていくのかを考える必要がある。従来のサイロ化された運用を考えると、俗人的な、人に依存する部分があったほか、セキュリティも個別に対応していく必要などがあり、全体を通した対応といったことが難しかった。それをemeraldでは標準化された体制とすることで、そうした壁を打破し、運用の最適化と業務の自動化の両立を可能とする」と概要を説明する。

emeraldの概要とコンセプト

具体的には、運用サービスを提供してきたことで得たこれまでの経験を踏まえて、顧客の視点に立って、単にサービスを提供するのではなく、ITアウトソーシングとしてITILなどに対応するなどのポイントを踏まえていることを前提に、「次世代運用システム」、「統合インフラ」、「プール運用体制」の3つの施策が掲げられている。

次世代運用システムとは、運用業務のシステム化や自動化を実現するもので、例えば、既存の運用としては人のコミュニケーションをハブにして、使う手順書もエクセルや紙ベースのものでできているといった属人的なものが多かったが、そうした人がコントロールしていた部分を、ワークフローやチケットシステムによるコントロールを行うことで作業のシステム支援などを実現。加えて、手順書などのドキュメントの整備・共有なども実施。キーツールとして、IPsoftの「IPcenter」を採用し、そこに独自の標準化した運用プロセス実装を適用することで、運用主体を人からシステムへと変更させ、人がなるべく介在しなくても障害に対応できる体制の構築を可能とした。

運用フローの多くを自動化することで、俗人化を防ぎ、運用工数の標準化を図ることが可能となる

また統合インフラとは、運用サービス専用インフラの確立によってセキュリティを確保しつつ、これまでサイロ化していたそれぞれの運用システムを統合することを可能としたもの。そしてプール運用体制はこれらの取り組みの最適運用を目指したもので、システムごとに個別の運用体制を築くのではなく、1つの大きなチームで複数のシステムを見ることを可能としたものとなっており、emeraldは、この3つが有機的に組み合わさることで実現されるサービスとなっている。

emeraldの実装イメージと、従来の運用サービスとの違い

リソース使用量やイベントログ収集、サービス状態からの自動処理といった各種の自動化プログラムに関してはIPsoftが対象プロダクトごとに用意しているほか、機能として足りない部分があっても順次、NSSOLとして追加していくことも可能だと言う。

こうした自動化によって、オペレーショナル工数の削減やマネジメント工数の削減が可能になることから、同社では運用要員の削減、運用自動化・作業支援による作業品質の向上、プール化・自動化による対応時間の短縮などを図ることができ、社内でのPoC(Proof of Concept、概念実証)では29%の運用工数削減効果が確認されたほか、一般的な運用案件のシミュレーションでは42%の運用工数削減効果が見込めることを確認したとする。

emeraldを活用した場合の運用工数削減効果

なおemeraldは2016年7月よりサービスの提供を三鷹市の拠点にて開始する予定で、2017年1月からは北九州市の拠点側でも開始する予定だとしている。