企業活動において請求書を含む間接費マネジメントは、保管などのエビデンスの観点や承認フローの設定など、ただ原価の低減だけではない課題を抱えているのだという。日本におけるCFO(chief financial officer/最高財務責任者)強化を掲げる日本CFO協会は、「請求書支払の実態に見る間接費マネジメントの課題」と題した財務マネジメントの調査を行い、この結果を報告した。

調査は、2016年2月29日から2016年3月11日の期間中、売上げ1,000億円以上の企業133社を含む有効回答社数232件、日本CFO協会会員を主体として行われた。

請求書の月次件数は、100件未満(11%)、100件以上1,000件未満(33%)、1,000件以上5,000件未満(14%)、5,000件以上10,000件未満(10%)、10,000件以上(32%)とバラツキが大きいが、売上高が1000億円以上に規模になると80%を超える企業で月次1,000件以上の請求書を扱っている。また、取引先会社数についても、85%の企業で100社以上となり、35%の企業が1,000社以上という大きな数になる。

請求書の月次件数(日本CFO協会Webサイトより)

これら膨大な数の取引先からの請求書を恙なく処理することは、非常な困難を伴うことを日本CFO協会は指摘している。支払い先の信用調査やエビデンスとなる請求書の取引金額の監視など、100社以上になると目検では限界になるだろう(日本CFO協会主任研究委員である中田清穂氏)。企業の競争力を高めるためには、単純な売上原価の低減を目指すのではなく、それに伴う業務体制にも戦略が求められる。

請求書の支払いには、当然に承認プロセスが必要となる。CFO協会では、このプロセスについてもサーベイをしており、請求書支払いの承認は90%が部門長の承認を必要とし、46%が部門長に加えて経理・財務部門での承認を必要としているが、社内規定が徹底されていると感じられないと思うか?の問いに対して、「強く思う」が8%、「そう思う」が23%と約30%がコンプライアンス上の不安を感じている。

奇妙なことに今回の調査での売上規模では"中規模"(売上高500億円~1,000億円未満)にあたる企業が「そう思う」(44%)ともっとも高いが、日本CFO協会主任研究委員である中田清穂氏は、大規模な組織では社内制度や研究制度が充実し"組織的なコンプライアンス"を実現するが、小規模の企業では目が届く"属人的な"コンプライアンスを実現する。この中間に位置する中規模な組織では、成長の過程のなかでコントロールが難しくなっている、と指摘している。

[売上規模別]申請承認プロセスにおいて社内規定が徹底されていないと思うか

これらを解決する手法のひとつに請求書支払業務における電子化・自動化があるが、7割の企業が現在の請求管理の仕組みに満足していないことも詳細にレポートされており、Web上で閲覧できる。調査協力を行うコンカーでも考察が発表されている。ITの大きな特長である"自動化"を用いて、できる限り負担を軽減した運用が請求書業務にも期待される。