半導体市場調査会社の米IC Insightsは5月12日(米国時間)、2016年第1四半期(1-3月期)の世界半導体企業売上高ランキング・トップ20を発表した(表1)。他社のランキングとは異なり、この表には、IDM, ファブレスのほか、ファウンドリを含んでいる。ファウンドリの売り上げは、製造委託元であるIDMとファブレスの売り上げと重複するので、世界半導体市場総売上高としては実態より大きくなってしまうが、ファウンドリの売上規模の大きさを明示することは、半導体製造装置・材料メーカーのビジネス展開上重要であるので、IC insightsは方針として、特に断らぬ限り、統計にファウンドリを含めている。

上位20社の本社所在地域別内訳は、米国8社 日本(東芝、ルネサス、ソニー)、台湾および欧州が各3社、韓国2社、シンガポール1社と、グローバルに分布している。20社のうち、ファウンドリは台湾TSMC、米GLOBALFOUNDRIES、台湾UMCの3社。ファブレスは、シンガポールBroadcom(旧Avago+Broadcom)、Qualcomm、台湾MediaTek、Apple、NVIDIA、AMDの6社。他の11社はIDM(垂直統合デバイスメーカー)。

トップ20から消えたシャープ

同社が示した上位20社から(他の調査会社などの統計のように)ファウンドリ3社を除き、IDM/ファブレスを加えた場合、18位には米国ON Semiconductor(8億1700万ドル)、19位には中国の新興ファブレスHiSilicon Technolog(8億1000万ドル)、20位にはシャープ(8億ドル)が繰り上がる。シャープは、IC Insightsの2015年第1四半期ランキング(ファウンドリを含む)ではトップ20に入っていたが、今回、3割減という売り上げの急落でAMDにその座を奪われ、ランク外になってしまった。台湾の鴻海精密工業による買収により、今後の同社の半導体部門が発展するのかさらに衰退するかが注目される。

20社中7社が2桁のマイナス成長

2016年第1四半期の上位20社の売上総額は前年同期比6%減。半導体企業全体では同7%減であった。上位20社のうち、実に7社が2桁減となった。特にDRAM価格の下落の影響で、SK Hynixは同30%減, Micron Technologyも同28%減、そしてスマートフォン向けの不振が響いたQualcommの同25%減が目立つ。

一方、Intelは、Altera買収により売上高を増やし、増収増益で悠々トップの座を維持した。2015年第1四半期にはIntelの売り上げはSamsung Electronicsの2割増し程度であったが、今期は約4割増となり、長年にわたり接近してきた差を広げる結果となった。しかし、Intelは、PC産業の長期凋落で12000名のレイオフ計画を発表しており、長年のPC向けMPUビジネスや参入失敗のモバイル向けビジネスから脱皮して企業風土を変えてデータセンターやIoTビジネスに舵を切れるかが注目される

また順位を一番上げたのは、Broadcom(7位→4位)とNVIDIA(20位→17位)であった。日本勢は、東芝が順位を1つ上げて9位、ルネサス エレクトロニクスが14位のまま、ソニーは順位を2つ下げて18位だった。ソニーは、AppleのiPhone減産の影響で、カメラに搭載されているCMOSセンサの減産を余儀なくされた。

ファブレスのAppleがプロセッサで15位に

ちなみにAppleが15位に入っているが、これはファウンドリに製造委託しているアプリケーション・プロセッサ(カスタム製品)の市場価値をIC Insightsが見積もった結果によるものである。

このARMベースのSoCは決して市販されることは無く、2007年以降、13種類のiPhoneに搭載され、iPadなど他の製品にも転用されてきた。最新のA9プロセッサは、2015秋に発売されたiPhone 6s/6s Plus,さらには2016年3月に急きょ発売されたiPhone SEに採用されている。2016年秋に発売されるであろう新モデルには、A10プロセッサが採用され、機能が向上することが期待される。これらのプロセッサは、Apple自身が設計し、TSMCとSamsungに製造を委託しており、その委託比率は、(Appleとファウンドリ2社の駆け引きで)めまぐるしく変わっている模様だ。もっとも、Appleも製造委託先も秘密保持契約により、製造委託・受託の事実を一切公表しておらず、真実は闇に中である。

ソニーのCMOSセンサは、他社でカメラモジュールに加工されて、光学製品として納入されているためカウントされない。ソニーの場合も、製造委託・受託の事実を一切公表していない。

AMDがシャープに替わり20位に

20位にファブレスとなったAMDが登場した。AMDの2016年第1四半期売り上げは8億3200万ドルで、前年同期比で19%減と売り上げを落とし、最盛期(2013年第4四半期。15億9800万ドル)の約半分の売り上げしかない。にも関わらず、新たに20位入りしたのは、シャープが前年同期比で3割も売り上げを落としたからである。AMDもIntel同様にPC向けMPUビジネスからの脱皮を図ろうとしているが、業績不振にあえいでおり、今後の脱PC戦略が注目される。

表1 2016年第1四半期(1-3月期)の世界半導体市場売上高ランキング・トップ20(単位は百万ドル) (この表にはIDM、ファブレスのほかファウンドリを含む)。表の左から、2016年第1四半期の順位、2015年第1四半期の順位、企業名、本社所在国、2015年第1四半期全半導体(ICのほか、光学デバイス、センサ、ディスクリートを含む)売上高、2016年第1四半期全半導体売上高、2016年第1四半期の前年同期比成長率(%)。いずれの数値も各社の発表資料およびIC Insights独自調査によるもの (企業名の終わりに(1)とあるのは専業ファウンドリ、(2)とあるのはファブレスを示す、それ以外はIDM(垂直統合デバイスメーカー。\*は、この1年間に2社が統合したが、2015年第1四半期の売り上げは、前年同期比の成長率を実態に合わせて計算するために統合前の2社の売り上げの合計額を示していることを表す。これらの企業は、Intel/Altera、Avago/Broadcom、NXP Semiconductors/Freescale Semiconductor、GLOBALFOUNDRIES/IBMである。また、\*\*は、TSMCおよびSamsungに製造委託したアプリケーション・プロセッサ(カスタム製品)の市場価値で見積もったもの)