2016年4月4日、新宿駅南口に日本最大級の高速バスターミナル「バスタ新宿」がオープンした。この施設について、4月21日に「第1回駅と空港の設備機器展」の会場で、国土交通省関東地方整備局東京国道事務所の西川昌宏所長の講演があった。

講演を行った国土交通省関東地方整備局東京国道事務所の西川昌宏所長

甲州街道の架け替えから始まったバスタ新宿

バスタ新宿はバスとタクシーのターミナルでもあり、JR新宿駅やエキナカ商業施設と一体となった施設でもある。それが東京国道事務所の管轄なのはなぜか。それは、バスタ新宿を整備するきっかけとなったのが甲州街道、国道20号線の架け替え工事だったからだ。

新宿駅南口と、バスタ新宿を含む新南口エリアの間を通る甲州街道は、JRや小田急の線路を跨ぐ橋梁だ。そのうち、JR南口に面した部分が建設されたのはなんと大正14年。老朽化で腐食が進み、大地震で破損すれば道路も線路も通行できなくなる危険性があった。そこで、道路橋を架け替えつつ、幅も従来の30mから広げて50mにすることが計画された。

国道20号架け替え工事と一体になった整備計画図。新宿三丁目駅を結ぶ地下歩道も建設されている。[出典(左上以外):東京国道事務所ホームページ]

その際、甲州街道上の客待ちタクシーが渋滞の原因となっていることから、単に道路を広げるだけでなくタクシー乗り場を増設することが考えられた。そこへ、新宿駅周辺に分散したバスターミナルも集約することが加わり、出来上がったのがバスタ新宿というわけだ。

実際、甲州街道の架け替え工事が始まったのは2000年。一方、バスタ新宿を含む新宿交通結節点事業の起工は2006年と、6年の開きがある。ただ、甲州街道もバスタ新宿の開業に合わせてタクシー乗り場ぶんの車線を縮小し歩道を広げるなどしているので、完成は一体的なものと言えるだろう。

甲州街道からバスタ新宿へ登るスロープは、ミライナタワー内だ。

このような経緯から、2階部分はJRの施設、3、4階部分は東京国道事務所が所有するバスタ新宿という複合施設になっている。また甲州街道からバスタ新宿へ入るスロープは、同時に建設された超高層ビル、ミライナタワーを通っている。

駅からバスタ新宿へ、スムーズな乗換案内が課題

バスタ新宿の平面図。新南改札の外の歩行者広場からバスタへのエスカレーターが広く整備されており、ホームからこちらへ利用者を誘導するよう、駅構内の案内標識整備などが検討されている。

バスタ新宿そのものの紹介は、これまでにも多くされているので割愛し、オープン後の状況とこれからについて紹介しよう。

バスタ新宿は新宿駅の南端、南口から甲州街道を渡った先にある。JRでアクセスしてバスタ新宿を利用する場合、最もスムーズな乗換ルートは新南改札を出て、バスタ新宿のエスカレーターを上がること。バスタ新宿もその動線を重視して広く作っていたのだが、実際には甲州街道に面したエスカレーターの利用が多いという。

JRのホームから南口改札へ上がってしまうと、甲州街道の横断歩道を渡ってバスタ新宿へ行かなければならないので、駅ホーム上での案内の改善が必要だろう。また、JR以外の私鉄などから歩くと横断歩道経由になってしまうので、南口のルミネ前からバスタへ直接行ける歩道橋が欲しい、という意見も質疑応答で聞かれた。

観光地へ直行するネットワークの中心に

全国300都市へ、1日1625便が発着するバスタ新宿は、誕生と同時に日本最大級のバスターミナルとして稼働中

バスタ新宿からは、道路がつながっていない北海道と沖縄以外、東北から九州まで様々な地域へ高速バスが発着している。新幹線沿線以外の観光地への直行便が充実しているのが特徴で、乗換などの手間がなく安価な高速バスは、外国人観光客にも人気の移動手段。英語・中国語・韓国語での案内サービスや外貨両替など、国際空港ばりの外国人対応サービスを充実させているのもこのためだ。

バスタ新宿の開業で高速バスの利便性が高まれば、高速バスの需要がさらに高まり、増便することも考えられる。1日約1600便という日本最大級のバス発着数を誇るバスタ新宿だが、今後さらなる増便に対応することはできるのだろうか。

15バースをフル活用、便利で安定的な運用へ

甲州街道の拡幅工事と相まって、バスタ新宿周辺ではタクシーによる渋滞が解消。空港ターミナルビルのような案内施設、屋根のついた乗降バースも利用者に好評とのこと。

西川所長によれば、開業以来バスの発着には大きな問題は起きていないとのことだが、大雨などの異常時もスムーズに運用できるかは今後の課題であり、経験を積んでいく必要がある。バスタ新宿は4階のバスターミナルに12バースの発着場があるほか、3階にも降車専用バースが3つあり、これらの運用で多数のバスを発着させている。運用が慣れてきた時点でどの程度の余裕があるか、今後の運用実績から見極めていくことになるだろう。

バスタ新宿はタクシーと高速路線バスの専用ターミナルだ。甲州街道からバスタ新宿へ入る交差点には警備員がおり、間違って自家用車などが進入した場合は3階でUターンさせる。また3階から4階のバスターミナルへ上がるスロープにはETCゲートがあり、高速路線バス以外は上がることができない。ただし、これまでのところ誤進入によるトラブルは起きていないとのことだ。

単なるバス停ではなく、多くの人の手で運用されている巨大ターミナル、バスタ新宿。今後は、人気が拡大する高速バスの需要にこたえつつ、より便利で安定的なサービスを構築していくのが課題ということになりそうだ。