コンカーは5月10日、同社の請求書管理クラウドサービス「Concur Invoice」を活用した総合サービスを日本で提供開始した。

コンカー 代表取締役社長 三村真宗氏

これまで日本では、従業員の経費精算に特化した「Concur Expense」が提供されてきたが、新サービスはベンダー経費に特化したものとなっており、第2の事業の柱を日本に投入することとなった。

コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏は、ベンダー経費における課題について次のように説明した。

「経費の中には、直接材の経費と間接材の経費がある。直接材は購買部門を経由して発注書を通じて調達される一方で、間接材は各部門・各拠点でばらばらに調達されている。そのため、これまで間接材は管理が難しい分野であった」

三村氏によると、間接材となるベンダー経費の業務品質を測るには、次の3つの観点があるという。

  1. 生産性(Time)
    ベンダー請求書の業務が効率的に行われているかどうか
  2. ガバナンス(Quality)
    ベンダー選定や価格交渉におけるガバナンスが効いているかどうか
  3. 可視化(Cost)
    ベンダー請求書の業務や発注額が適切に可視化・分析されているか

ベンダー経費における典型的な課題として、「ベンダーがマスタ化されていないため、毎回入力と確認が必要」「手入力に多大な負荷がかかる」といった生産性の問題や、「ベンダー選定が各部門に依存し、特定ベンダーへ偏る」「ベンダー選定、発注額の健全性の確認が困難」といったガバナンスの問題などが挙げられた。

ベンダー経費における典型的な課題

Concur Invoiceでは、上記3つの観点を次のように解決するという。

  • 生産性に対して
    OCR・BPOを活用した手入力からの脱却
  • ガバナンスに対して
    仕組みによる自動チェック
  • 可視化に対して
    データ発生源で分析

Concur Invoiceによる課題の解決策

同サービスにはOCRエンジンが組み込まれているため、請求書をPDF化し、同サービス上にアップロードすることによって、請求書の内容が自動でデータ化される仕組みとなっている。

BPOサービスについては、フィリピン・マニラにあるConcur BPOセンターにおいて日本語スタッフがデータ化できる体制となっている。同センターでは、日本語以外の言語についても対応しており、現在800人のスタッフがいるという。日本語スタッフは現在5人で、年内には15人に拡充する予定だとしている。

三村氏は「OCRとBPOの違いはさまざまあるが、1つは費用と精度の観点。OCRに関してはクラウドサービスの利用料の中に含まれているため、無償で提供しているが、精度は入力補助の範疇に留まるので、データをそのまま使うのではなく、きちんと補正してもらう必要がある。BPOは精度は高いため負担は少ない一方で、人手がかかるので有償となる。安いが精度が低いものでいいか、費用がかかるが精度の高いものにするかといった選択になってくる」と述べた。

BPOサービスの価格は、経費精算や請求処理の回数に応じて発生する従量課金の金額と同程度だとしている。

OCRとBPOによる請求書データ化のフロー

また、OCRとBPOに関しては同社がサービス提供するだけでなく、パートナーとの提携を進めているという。OCR分野では、MFPの国内ベンダー数社と共同開発を進めており、年内中に発表する予定としている。そのほかスキャナベンダーとも技術開発を進めているとのこと。BPOに関しては、クラビスの「Streamed」やそのほか国内BPO事業者との提携が進められている。さらに、インフォマートとは、紙を経由せず電子的にベンダーから請求情報をもらってそのままコンカーのクラウドサービスに取り込む電子取引における提携も準備されている。

請求書データ化のオプション

可視化の分野では、Concur Invoiceの中でBIの仕組みが提供されていることから、「特定の社員が高額な発注をしていないか」「推奨外のベンダーとの取引が多い部門はどこか」といった分析が可能となっている。

Concur Invoiceで実現するベンダー請求書業務のあるべき姿

Concur Invoiceでは、Concur BPOセンターにおける日本語対応以外にも、日本市場向けの機能が用意されている。現時点では、月次締め対応や軽減税率対応、同席者トラッキングがリリースされており、来年にはe-文書法への対応が予定されている。

コンカーは、2016年は従業員1000人以上の大手企業を中心にアプローチし、来年には中堅企業に対してもアプローチしていく予定としている。また、2020年までに360社へのConcur Invoiceの導入が計画されている。