海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの共同研究グループが、シベリアの永久凍土の乾燥化が進み、その一因がこの地域の急激な温暖化によるものであることを明らかにした。温暖化の影響が北極周辺に広く及んでいることを裏付ける研究成果で、論文はこのほど英科学誌に掲載された。
JAMSTEC地球表層物質環境研究分野と名古屋大学宇宙地球環境研究所などの共同研究グループは、米航空宇宙局(NASA)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が2002年に打ち上げた「重力観測衛星」のデータなどを使って02年4月から15年8月までの北極海沿岸のシベリアの永久凍土地帯の土壌、湿地や湖沼などに含まれる水の量(陸水貯留量)を分析した。
その結果、陸水貯留量は1年当たり6ミリ減少していることが判明した。陸水貯留量は降水量から蒸発水分や河川流出水分を差し引いたもので高さで示され、乾燥化の指標になる。また、この地域の6月∼8月の夏季気温は年平均0.36度上昇していることも明らかになった。研究グループは、夏季の気温上昇が陸の水分を蒸発させ、乾燥化を促進する一因、としている。
地球温暖化は地球上のすべての地域の気温が一律に上昇する現象ではない。大気や、陸地、海に含まれる熱や水分などの循環パターンが二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスによる「温室効果」によって複雑に変化し、その結果世界各地の気候を大きく変動させる。世界の中でも特に北極域はこうした気候変動の影響を強く受けるために各国研究者の研究対象になっている。
研究グループは今回明らかになった北極周辺を含めた「北極域」の陸水貯留量データは今後全地球規模の気候変動解明につながる、としている。
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