企業における資金・財務管理の高度化やグループ内部統制の高度化をサポートするクラウド型グローバル財務管理ソリューション「キリバ・エンタープライズ」を展開するKyribaの日本法人であるキリバ・ジャパンは、2016年1月より新しい社長が就任した。

同社は4月28日、新社長となる桑野祐一郎氏の紹介とともに、今後のビジネス戦略について、記者会見で説明した。

左から、Kyriba 会長兼CEO ジョンルーク・ロバート氏、キリバ・ジャパン 代表取締役社長 桑野祐一郎氏、サンブリッジコーポレーション 創業者兼グループCEO アレン・マイナー氏

次のフェーズへ進むための新社長就任

2000年に設立されたKyribaは現在、従業員数は450名、世界各地で12のオフィスを展開している。100カ国で1300クライアントと4万人のユーザを獲得しており、2017年には1億ドルの売上を達成する見込みとなっている。

Kyriba 会長兼CEO ジョンルーク・ロバート氏

キリバ・ジャパンは4年前に設立されており、Kyribaの会長兼CEOを務めるジョンルーク・ロバート氏は、「日本はアメリカに次いで2番目に導入が進んでいる市場」と述べた。日本では、ヤンマーやコニカミノルタなど、現在30社以上に導入されているという。ロバート氏は日本市場について、次のような見解を示した。

「長期的に見ても、日本はアメリカに次ぐ市場となる。3~4年後を見通した時、最低でもトータルの売上の10%程度、日本市場が成長していくだろうと考えている。われわれにとって、日本市場は戦略的な位置付けだ」

キリバ・ジャパンの社長交代については、同社の株主であるサンブリッジコーポレーション 創業者兼グループCEOのアレン・マイナー氏が、次のように述べた。

「日本法人を立ち上げる時に失敗しないためには、現地リーダーの存在が重要。現地リーダーのクリエーティビティやリーダーシップ、英語力など、現地の社長を誰がやるかによって、全く変わってくる。今後のフェーズにおいては、営業だけでなく、マーケティングやアフターケアなど総合的にリーダーシップを発揮することが大事であり、新しく社長に就任した桑野氏は次のステージのリーダーとしては完璧だと考えている」

トレジャリーマネジメントが実現するもの

キリバ・ジャパン 代表取締役社長 桑野祐一郎氏

キリバ・ジャパンの新社長となる桑野氏は、日本企業の課題について、次のように述べた。

「日本の事業法人は大事なお金に関する情報を、エクセルやメールを使って管理している。本来であれば、これは正確性を求められ、リアルタイムに今いくらあるのかを管理する必要があるが、エクセルのようなスプレッドシートで管理・集計することに集約されていることが問題である。この部分を、クラウドコンピューティングで自動化・効率化させることによって、戦略的な意思決定につなげてもらえるのがキリバのサービスだ」

実際に同社システムを導入しているコニカミノルタでは、3つの効果が生まれているという。1つめは、キャッシュ残高の圧縮である。同社では、これまで在外子会社の手元資金を把握することができず、赤字化することを恐れ、各社で多めに資金を確保している状況であったという。資金を見える化することによって、余計に持ちすぎている資金を戦略的な投資にまわすことができるようになり、約2000億円あった手元資金を、約1100億円に削減することに成功した。桑野氏は、「バランスシートを改善する上では、極めて有効な手段。資金を可視化して、使うべきところにお金をまわしていくことに成功している」と述べた。

2つめは、為替管理の強化である。新興国の通貨が変動することで発生する為替変動分(エクスポージャー)をマネジメントすることによって、変動による為替の差損を起こさないような管理体制の強化を行っているという。

3つめは、関連会社間の決済におけるインハウス・バンキングの活用である。グループ間の企業取引をネッティング(差額決済)してキャッシュレス化することによって、銀行の手数料を削減することに成功しているのだ。

「トレジャリーマネジメントの仕組みは、導入効果(費用効果)を出すことができる仕組みとなっているため、多くの事業法人に導入してもらえるチャンスがあると考えている」(桑野氏)

コニカミノルタでの導入効果

キリバ・ジャパンの契約額は堅調に推移しており、2016年には、営業を開始した2013年と比べて、80倍近く成長する見込みとなっている。

キリバ・ジャパンの新規年間契約額の推移

桑野氏は、同社のミッションについて次のように語った。

「日本の事業法人は、人口が少なくなり、マーケットがシュリンクする中、海外のビジネスを伸ばしていかなければいけない状況だ。ただ一方で、海外のビジネスを展開していくと、リスクが増大していく。お金を有効に使っていくためには、将来のリスクをうまく管理していく必要がある。われわれは、日本の事業法人の財務業務を高度化することによって、日本企業の国際競争力を強化していく一翼を担っていくことをミッションとしている」