東京大学(東大)は4月27日、波エネルギーを吸収することで乗り心地を大幅に向上させた小型船「Wave Harmonizer」(WHzer)を開発したと発表した。
同成果は、東京大学生産技術研究所 北澤大輔 准教授、マネージメント企画 代表取締役社長 前田輝夫氏らの研究グループによるもの。
日本の沿海には、年平均10~15kW/幅(m)といった豊富な波エネルギーがあり、現在の小型船は、波による揺れで乗り心地が悪く、その航行は海況によって左右されていた。
今回、同研究グループは、フロートが波から受ける力と、発電量やキャビンの揺れの制御を予測するシミュレーターを開発し、船の諸元や制御系の要素を選定した。まず、試作した全長1.6mの縮尺実験船を試作し、水槽模型実験を実施。最適要素の組み合わせでは、フロート幅に入る波エネルギーの150%以上を電力として獲得すると同時に、船の上下揺れ、縦揺れが、常用領域で波高の半分以下に抑制されることがわかった。この結果を全長約8mの小型漁船に換算し、小型漁船の操業条件、操業時の海況条件などを統計的に求めて当てはめると、年間を通じて約30%のエネルギーを削減できることになる。
この結果をもとに同研究グループは、2015年4月より、海上実験用の全長3.3mの小型船の研究開発に着手。2015年12月に2名が乗船できる小型船を進水させ、下関の日本海側にある油谷湾で海上実験を行った。さらに、「北海合同波観測プロジェクト」(JONSWAP)の波形を水槽で実験船に与えるという検証実験を行い、同海上実験の結果はどこの海域でも利用できることを確認している。
たとえば、波高0.2mの海域において、最適要素の組み合わせでは、波エネルギー吸収比約7割、またキャビンの揺れを1/4以下に抑えることができたという。
同研究グループは今回の成果について、商品化の目処が立ったとしており、エネルギー消費削減が求められている漁船、揺れの抑制が重要な作業船、プレジャーボートなどに広く応用されることが期待されると説明している。