神戸デジタル・ラボ(KDL)は4月25日、キリンから自動販売機データの提供を受け、KDLが製品化を進めている購買行動シミュレータを用いて、「自動販売機のデータから生成した「関心モデル」による購買行動シミュレーション」の実証実験を実施したと発表した。

KDLでは、2015年より、既存のデータを活用して分析に足りない行動ログデータを仮想的に生成・補完し、購買行動をシミュレーションできるソフトウェアの製品化に取り組んでいる。

購買行動シミュレータは、統計データや実行動ログデータから自動的に生成する「関心モデル」によって、個々に異なる興味・関心を持つ消費者の仮想の行動ログデータを必要人数分生成し、購買行動をシミュレーションできるソフト。「関心モデル」とは、商品やサービス、場所等への関心の度合いを数値化したものだという。

なお、同シミュレータは京都大学大学院情報学研究科・新熊亮一准教授とKDL、情報通信研究機構(NICT)が共同で知財を保有する技術を基盤としている。

実験は、同シミュレータによる購買の予測結果や関心モデルの有効性を検証することを目的に、キリンが保有する自動販売機の購買データを利用して2015年12月から2016年3月にかけて実施。自動販売機の購買データをベースにシミュレータを用いて購買行動をシミュレーションした結果を実際の購買データと比較し、妥当性があるかどうかを検証した。

購買行動シミュレータのイメージ

同社によれば、シミュレーション結果による購買データを実際の購買データと比較したところ、どちらも誤差は概ね 2%以内に収まり妥当性があると言える結果が得られたという。

2015年7月の購買データによる同月のシミュレーション結果と実際の商品売上本数の割合の比較

2015年7月の購買データによる8月のシミュレーション結果と実際の商品売上本数の割合の比較

また、同シミュレータが生成される関心モデルにより、自動販売機の消費者の各商品に対する関心を可視化した。これにはまだ購入したことのない商品への関心も含まれており、人の潜在的な関心を可視化できることを実証した。

消費者の関心可視化のイメージ

同社では本実験結果から、購買行動シミュレータにより商品を変更した場合や新商品を入荷した場合のシミュレートが可能であること、また個々に異なる消費者の関心を可視化できることが実証されたとしており、これにより、例えば商品ラインナップの検討や翌月のシミュレーションに基づく在庫の管理などへの本シミュレータの活用が期待できるという。

同社は今後、今回の実験結果をベースに同シミュレータのマーケティング分野における具体的な利用方法を検討し、機能性・表現性・拡張性を向上させ、製品化に向けて取り組む。