東京大学(東大)は4月22日、新たなゲノム編集ツールとして注目されるCRISPR-Cpf1の分子構造を明らかにしたと発表した。
同成果は、東京大学大学院 理学系研究科 博士課程 山野峻氏、西増弘志助教、石谷隆一郎准教授、濡木理教授、Massachusetts Institute of Technology Feng Zhang博士らの研究グループによるもので、4月22日付の米科学誌「Cell」に掲載された。
近年、ゲノムDNAの塩基配列を書き換えるゲノム編集技術が注目を集めている。現在、ゲノム編集にはCas9とよばれるタンパク質が利用されているが、昨年、Cas9に加え、Cpf1とよばれる新規のタンパク質もゲノム編集に利用できることが報告された。Cpf1とCas9はどちらもガイドRNAと協働して標的DNAを切断する働きを持つが、Cas9は二本鎖DNAを切断し平滑末端をつくるのに対し、Cpf1は突出末端をつくる。また、Cpf1はCas9よりも短いガイドRNAと結合して働くことがわかっていた。これまでに同研究グループはCas9の分子構造を決定し、そのDNA切断機構を明らかにしてきたが、Cpf1がDNAを切断する分子機構はわかっていなかった。
今回、同研究グループは、Cpf1、ガイドRNA、標的DNAからなる複合体を結晶化し、大型放射光施設「SPring-8」のBL32XU、BL41XUおよびSwiss Light SourceにおいてX線回折データを取得し、その立体構造を解明。この結果、Cpf1はCas9と大きく異なる立体構造をもつことが明らかになった。特に、DNAの"はさみ"としてはたらく部分の構造はCpf1とCas9において大きく異なっていたという。
同研究グループは、今回の成果について、Cpf1を改変した新規のゲノム編集ツールの開発につながることが期待されるとしている。