大阪大学(阪大)、北海道大学、理化学研究所は4月22日、ビームサイズを自由自在に制御できるX線ナノビームの形成に成功したと発表した。
同成果は、大阪大学大学院 工学研究科 山内和人教授、松山智至助教、北海道大学 電子科学研究所 西野吉則教授、理化学研究所 放射光科学総合研究センター 石川哲也センター長、矢橋牧名グループディレクターらの研究グループによるもので、4月21日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
電磁レンズによって電子ビームを自在に制御することでひとつの装置でさまざまな分析を実施できる電子顕微鏡とは異なり、従来のX線分析・X線顕微鏡では、ひとつの装置は決められた集光ビームを照射することしかできなかった。そのため、たとえば走査型X線顕微鏡のようなできるだけ小さなX線ビームを必要とする手法と、コヒーレント回折イメージングのような試料サイズと同程度のX線ビームを必要とする手法を1台の装置で実施することはこれまでできなかった。
今回、同研究グループは、自由自在に形状を変えることができるX線用の高精度形状可変鏡を開発しこれを4枚組み合わせることで、試料位置を含めた実験セットアップを変えることなく集光スポットサイズを制御できる新しいX線集光システムを、大型放射光施設「SPring-8」にて開発した。同システムでは、形状可変鏡の形状を変えるだけで、開口数の異なる集光光学系を作り出すことができ、開口数を変更することで回折限界下の集光スポットサイズを制御できる。
回折限界まで集光させるためには、鏡の形状を2nm以下という精度で変形させなければならないが、今回、鏡の形状誤差を高い精度で知ることができるX線波面計測法を開発したことで、鏡の形状をモニターしながら誤差2nmで変形を制御することが可能となった。波長1.24Å(X線エネルギー:10keV)のX線を使用し、開口数の異なる3つの光学系において集光ビームを評価したところ、形成した最小ビームは、108nm×165nm(横×縦)の長方形であり、回折限界集光スポットサイズに近いことを確認。また、最大集光ビームは、560nm×1434nm(横×縦)であり、こちらもほとんど回折限界に達していたという。
同研究グループは、今回の成果を応用することでさまざまな顕微分析を1台の装置で実施できる多機能型X線顕微鏡の実現が期待されると説明している。