リコーは4月15日、環境を基軸とした新規事業の創出・拡大を目的とした「リコー環境事業開発センター」を静岡県御殿場市に開所した。同社は、2015年1月に同センターの発足について発表していた。
同センターは、同社創立80周年の記念事業のひとつとして設立されたもの。国内の生産機能再編に伴い2013年に生産が終息していた「御殿場工場」を、環境関連事業を創出する拠点として有効活用するという狙いがある。
同社の環境関連事業のビジョンについて、リコー 代表取締役 社長執行役員 三浦善司氏は「温暖化や資源の分野で2020年、2050年の中長期環境目標を設定し、商品開発、サービスの提供などを進めている。環境事業開発センターは、省エネコピー機や再利用部品を活用したリユース製品にとどまらず、さらに広い分野で環境事業を展開できないか考えていくトライアルの場である」と語っており、グループ全体の環境事業において、2020年度に1000億円規模の売り上げを目指していくとしている。
この環境事業の軸となる同センターは、「リユース・サイクルセンター」、「環境技術の実証実験の場」および「環境活動に関する情報発信基地」の3つの機能を併せ持っている。本稿では、これらの機能について、それぞれ詳しく見ていくことにする。
年間2万台の複合機を再生する「リユース・リサイクルセンター」
リユース・リサイクルセンターは、2015年5月よりすでに活動を開始しており、年間約2万台の複合機を再生している。同社におけるマシンや部品のリユース・リサイクル機能はもともと全国12カ所に点在していたが、今回これを3ケ所に統合し、同センターをその中心拠点とした。グローバル全体で、年間約6万台のマシンリユースが行われているが、そのうち2万台が日本国内のものであり、さらにその99%が同センターで行われる。
同社のリユース・リサイクルは、コピー機やプリンタを回収して再生するというものだが、製品の状態に応じて、製品および部品のリユースだけでなく、廃プラスチックを製品の原料として再利用するマテリアルリサイクル、廃プラスチックを化学的に分解して再利用するケミカルリサイクル、焼却の際に発生する熱エネルギーを回収するサーマルリサイクルへと回していく。リコー 取締役 専務執行役員 山下良則氏は「製品開発の段階から、リサイクルを意識して進めている」と、同社のリユース・リサイクル方針について説明している。
産学連携でオープンイノベーションを目指す「環境技術の実証実験の場」
また同センターでは、新規環境事業の創出に向けて、環境技術に関するさまざまな実証実験を行っていく。
実証実験では、廃プラスチックの油化や未利用資源からの水素製造、マイクロ水力発電や木質バイオマス利活用といった省資源および創エネルギーに関するもの、また、急速充放電が可能な新型二次電池で無人搬送車を稼動させる実験や次世代型栽培技術の研究など、先進技術による省エネルギーに関する取り組みも推進していく予定だ。
同社はこれまで、自前で研究や開発を進めることが多かったというが、「人と知の循環、オープンイノベーションを促すため、できるだけ産官学一緒に事業を進めていきたい」(山下氏)としており、同実証実験で獲得した環境技術およびシステムを活用して、国内外への環境関連の新規事業の展開を目指していく考えだ。
「環境活動に関する情報発信基地」としての役割も
さらに同センターは、「環境活動に関する情報発信基地」としての役割も担う。
山下氏によると、同社はこれまであまりアピールが得意な体質でなかったというが、「あるべき姿を共有するのも大事な姿勢だと思った。できるだけ我々の思っていることを紹介するための情報発信基地として使っていきたい」と、今後は積極的に、環境活動や環境に配慮した製品・サービスなどに関する情報発信を行っていく姿勢を示している。
また同社は、御殿場市の地域創生プロジェクト「御殿場市エコシティ化構想」や、森林保全事業「モデルフォレスト事業」にも参加し、地元地域との環境事業開発の取り組みも開始している。山下氏は、「この事業は、もともと御殿場市とともに進めてきたもので、今後は小学校などに向けた見学ツアーも考えているところ。社会と一緒に育てていけるセンターになれば」と説明しており、環境教育など地域社会に貢献する活動も展開していくという。