理化学研究所(理研)は4月13日、二酸化炭素(CO2)やホウ素化合物など入手容易な原料から、新奇な構造を持つリチウムホウ素化合物を合成する手法を開発したと発表した。
同成果は、理化学研究所 環境資源科学研究センター 先進機能触媒研究グループ 侯召民グループディレクター、張亮研究員、西浦正芳専任研究員、侯有機金属化学研究室のビアトリース・キャリー国際プログラム・アソシエイトらの研究チームによるもので、4月9日付けのドイツ科学誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。
リチウムホウ素化合物は、スマートフォンやノートパソコンなどの充電池として需要が大きいリチウムイオン電池の電解質として利用されている。しかし、実用化に耐えうる高純度のリチウムホウ素化合物を得るには、複雑な多段階反応を用いる必要があるうえ、従来法では合成できる構造や組成も限られていた。
同研究チームはこれまでに、銅触媒存在下で、CO2、ホウ素化合物、リチウムアルコキシド、アルキン類などを反応させるというアルキン類のカルボキシル化反応の開発を進めていたが、今回、この研究過程で、アルキン類をアルデヒド類に変えて同様な反応を行ったところ、分子内に5員環構造を持つ新奇なリチウムホウ素化合物が選択的に生成されることを発見した。また、さらに詳しく検討したところ、さまざまな官能基を持つアルデヒド類から、多様なリチウムホウ素化合物を効率的に合成できることが明らかになった。
従来のリチウムホウ素化合物は、環状カーボネートなどの有機溶媒と組み合わせて、リチウムイオン電池の電解質として利用されている。同研究グループによると、今回合成されたリチウムホウ素化合物は、ホウ素原子が環状カーボネートに組み込まれているため、従来のリチウムホウ素化合物とそれを溶かす有機溶媒が"一体化した物質"と見なすことができるという。そのため、有機溶媒を必要としない、新しいリチウムイオン電池の電解質の開発へ展開することが期待できるとしている。