通信事業者などが災害時に無線LANの"契約者縛り"を開放し、誰でも利用できるようにする「00000JAPAN」の仕組みは、運用が開始された2014年5月から2年が経とうとしている。

参画組織のスポット数は、NTTやKDDI、ソフトバンクなどのキャリア系が90万スポット、自治体らが20万スポットで合計110万スポット以上に達する。幸いにも、大規模災害が起こっておらず、実際に稼働した例はない。ただ、地方自治体主催の防災訓練における体験イベントなど、啓蒙が進められている。また、大規模災害以外でも、2014年8月に起きた広島土砂災害の教訓から、自治体が公衆無線LANの開放が必要と判断すれば、事業者との協議の上で利用できるよう、ガイドラインの改定も行われた。

そこで本稿では、運用が進む「00000JAPAN」の現状をお届けしたい。

アプリとSDKで利用促進へ

これまでの00000JAPANは、実際に利用する際、スポットの近くへ行き、スマートフォンなどでWi-Fiの接続先一覧に表示される「00000JAPAN」をタップして接続する手法が取られていた。そもそもこの取り組み名称である「00000JAPAN」は、このWi-Fi接続先の表示で、一番上に表示されることを目的としたものだ。

最初に岩手県釜石市で実証実験を行った際、数字順(0~9)、アルファベット順(A~Z)という順序で表示されてしまうAP名一覧の問題を把握し、実運用の際に生かした。ただ、スマートフォンをフルに使いこなせる若年層だけでなく、災害時には児童から高齢者までと、ITリテラシーがあまり高くない層でも幅広く利用できるようにする必要がある。そうした環境では、この「00000JAPAN」でWi-Fi接続先一覧のトップで表示できるようにする以外の方策を用意しなくては、誰もが簡単に使えるとは言えない。

2014年の提供開始時には00000JAPANをタップすることで接続していた

そこで無線LANビジネス推進連絡会は、この3月に「00000JAPAN」へ簡単に接続できるアプリを開発した。アプリでは有効/無効をボタンで切り替えるだけで接続できるため、大幅に利用の障壁が下がる。

専用アプリで簡単に接続できるようになった00000JAPAN。現状は提供APIなどの総合的な理由でAndroid版のみの用意となる。通知領域にも接続中と表示することで、安全・安心に00000JAPANを利用できる

また、単体のアプリとして提供するだけではいざという時に一般利用者がインストールして利用する可能性が低いため、SDKを提供してキャリアや自治体などのWi-Fi接続アプリに組み込めるようにした。つまり、携帯キャリアがプリインストールしているキャリア提供の公衆Wi-Fiや、観光で訪れた地域の自治体が提供する公衆Wi-Fiを利用するためにアプリをインストールすれば、いざという時にそのアプリを開くことで、そのままWi-Fiを利用できるようになる。

公衆Wi-Fiの利用者数は2015年のICT総研の調査で2014年の2278万人から4073万人へ増加すると見込まれており、災害時にWi-Fiを必要とする人数も必然的に増大する。アプリによって認知拡大だけでなく、災害時に通信を必要とする人に手段を渡すことで"自分の手で情報を収集できる安心感"を与えられるようにすることが、同連絡会の大きな目標と言える。