静岡大学(静大)は4月11日、時間的な「順序」を判断する際には身体運動をつかさどる脳領域が関与していることを発見したと発表した。
同成果は、静岡大学情報学部 宮崎真教授、ATR脳活動イメージングセンタ 河内山隆紀研究員らの研究グループによるもので、4月11日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
身の周りで起こる出来事の時間的な順序は、周囲の世界の状況や変化を的確に捉えるために不可欠な情報である。この情報処理が人間の心的過程でどのように行われているのかを調べるため、時間順序判断を検査課題として用いた行動科学的研究がこれまで広く行われてきた。また近年、fMRIを用いて時間順序判断を行っている実験参加者の脳活動を調べた研究結果も報告されている。しかし、これらの先行研究で検出された脳部位には順序の判断以外の時間処理に関わる活動も含まれていた。
そこで今回、同研究グループは、行動科学的な知見・理論に基づき、順序判断中の脳活動から同時判断中の脳活動を差し引く実験デザインを策定。健常成人16名(男女各8名、平均25.7歳)に対し、11種類の時間差が設定された触覚刺激を左右の親指に与え、「左右の刺激のどちらが先であったか(順序判断)」および「左右の刺激が同時であったか、非同時であったのか(同時判断)」を判断してもらい、fMRIを用いてこのときの脳機能測定を行った。
この結果、同時判断中に比べて、順序判断中では、左側の腹側運動前野と後頭頂野、両側の背側運動前野と視床に有意に強い脳活動が検出された。加えて、統計閾値を緩和すると小脳にも強い活動が検出された。また、順序判断に比べて同時判断で活動が強まった脳部位は島皮質後部のみとなった。運動前野、後頭頂野、小脳は、身体運動の制御に関与する脳領域として知られており、また視床も、身体運動の制御に寄与していることが報告されている。したがって、時間的な順序の判断には、本来、体の動きをつかさどる脳領域が関与していることが示されたといえる。
宮崎教授は、今後について「fMRIを用いて、視覚刺激や聴覚刺激の時間順序判断を行っているときの脳活動も調べて、今回の結果が時間順序判断一般にあてはまるのか、触覚刺激ならではのものなのかを確めていきたい」とコメントしている。