九州大学(九大)は4月8日、安全で効率的な二酸化炭素(CO2)地中貯留を可能にする技術を開発したと発表した。
同成果は、九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 辻健准教授、蒋飛学術研究員、米国ノートルダム大学 Kenneth Christensen教授らの研究グループによるもので、3月11日付けのオランダの科学誌「Advances in Water Resources」オンライン版に掲載された。
発電所などのCO2大規模排出源においてCO2を分離・回収し地中に貯留するプロジェクト「CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)」は、海外においてすでに何件か実施されており、国内では北海道の苫小牧市で4月より実施される予定となっている。このCCSというアプローチは、近未来的にCO2を削減できる技術として注目されている一方で、日本周辺にはCO2を圧入・貯留できる地層(貯留層)が広域的に分布している場所が少なく、限られた貯留層のなかに効率的にCO2を圧入・貯留する必要があった。
今回、同研究グループは、天然の岩石の中にある微細な間隙の構造を、特殊なCT装置を用いて高解像度で抽出し、その間隙内部を流れるCO2と水の挙動を、格子ボルツマン法という数値シミュレーション手法を用いることで正確に計算することに成功した。なお、GPUを用いた並列大規模計算を行うことにより、世界最大の計算グリッド数の岩石間隙モデルに対して計算を行っている。
また同手法を用い、さまざまな貯留層の条件において岩石間隙内のCO2の挙動を計算し、岩石間隙の中にCO2をどれくらい貯留できるかを調べた結果、CO2の貯留量は、キャピラリー数と、水とCO2の粘性比の2つのパラメータで決定できることが明らかになった。キャピラリー数と粘性比は、貯留層の状態やCO2の圧入方法で決定されるため、同手法を用いればCO2を効率的に貯留することのできる貯留層条件を明らかにすることができる。さらに、同手法を用いてCO2の圧入プロセスを工夫すれば、CO2の挙動や貯留量をコントロールできる可能性がある。
同研究グループは今後、実際のCO2貯留サイトで取得したさまざまな岩石に対して、同手法を適用していきたいとしている。