神戸大学は4月6日、植物が枯れるメカニズムを明らかにしたと発表した。
同成果は、神戸大学 農学研究科 三宅親弘准教授、博士後期課程 高木大輔氏らの研究グループによるもので、3月2日付けの米科学誌「PlantPhysiology」オンライン版に掲載された。
多くの植物は、光合成により生育に必要なエネルギー源を生み出しているが、光合成に必要な光エネルギーを過剰に吸収すると、植物にとって有害な活性酸素が生成されることが知られている。通常、植物はこの活性酸素を取り除く酵素を持っているが、水不足やミネラル過多などの環境ストレスにさらされると、光合成が抑制され活性酸素の生成に活性酸素の除去機能が追いつかなくなり、植物は枯死する。これまでに、活性酸素が植物細胞内の葉緑体で生成されることは明らかになっていたが、その詳細な生成場所やメカニズムは不明となっていた。
同研究グループは今回、植物の葉から葉緑体と葉緑体チラコイドを取り出し、波長の短い光を連続して照射するという実験を行った。この結果、光化学系I複合体のうち、「P700」とよばれる光エネルギーを吸収する分子が機能しなくなることで、スーパーオキシドラジカル(O2-)、ヒドロキシラジカル(OH・)、一重項酸素(1O2)の3種類の活性酸素が生成されることが明らかになった。また光化学系Iへの電子の流れを制限すると、活性酸素の生成が抑制されることも確認している。
三宅准教授は今回の成果について、「活性酸素の生成メカニズムやその制御メカニズムの一端を解明できたことで、温暖化環境下での食料確保が将来可能になるかもしれない。今後は、活性酸素の制御メカニズムを分子レベルで解明したい」とコメントしている。