北海道大学の研究グループが、中南米を中心に流行が広がっているジカ熱の感染が日本国内で発生する確率は「今年末までに16.6%」と5日発表した。独自に開発した統計モデルでの推計で、論文は同日付の英科学誌に掲載された。現段階での推計値で広がりの規模などは示していない。今夏のリオデジャネイロ五輪・パラリンピックで流行地であるブラジルとの往来が増えればこの数字は上がる可能性もあるとみられている。
研究グループは独自に開発した統計モデルに、ジカ熱の流行に関する詳細なデータや、航空機による渡航客の移動、さらにウイルスを媒介する蚊に関するデータを入力、各国内でジカ熱が広がる可能性を推計した。
その結果、今年1月末の時点で、今年末までに国内で感染が発生する可能性は16.6%との数字が出たという。このほかの国では台湾は36.7%と日本より高く、亜熱帯や熱帯地域で高かった。一方英国は6.7%、オランダは5.3%と日本よりも低い数値が出た。
研究グループは、国内での感染を必要以上に社会的不安を煽るより、妊婦への渡航の注意喚起をすべきだ、としている。
ジカ熱は蚊が媒介するウイルス感染症。高熱や頭痛、関節痛、発疹などの症状を示し、重症に至らないケースが多く、感染しても約8割は症状が出ないという。現在、ワクチンや治療薬はない。原因ウイルスが1947年にアフリカのサルから見つかった。予防には蚊の対策が不可欠で、性交渉による感染例もある。ブラジルでは新生児の小頭症が急増し、妊娠中の感染が原因とみられている。また、手足のまひを伴う病気「ギラン・バレー症候群」を引き起こす可能性も指摘されている。
これまで国内で感染が広がった報告例はないが、中南米で流行が拡大した昨年5月以降、ブラジルなど中南米に滞在、帰国した4人が発症している。世界保健機関(WHO)は2月1日に緊急事態を宣言し、日本政府も同月5日、国内で患者を診察した医師に報告を義務付ける感染症法上の「4類感染症」に指定した。
8月のリオデジャネイロ五輪・パラリンピックが始まるとブラジルへの渡航者は少なくとも1万人を超えると予想され、国内での感染拡大も懸念されている。このため政府は4月1日、地方自治体や企業など国全体で蚊の駆除対策を取る国民運動を展開することや、感染を心配する妊婦からの電話相談に応じる仕組みを5月上旬をめどにつくることなどを盛り込んだ対策を公表している。
この研究の一部は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)の一環として行われた。
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