日本電信電話(NTT)及びNTTコミュニケーションズは4月4日、総務省とフィリピン科学技術省、国際電気通信連合(ITU)に協力し、2013年11月の台風で大きな被害を受けたフィリピン・セブ島の被災地において、通信の即時回復を可能とする「移動式ICTユニット」を用いた実証実験を2014年12月から2016年3月にかけて実施したと発表した。

移動式ICTユニットのユース・ケース

移動式ICTユニットとは、大規模災害時に被災地に搬入・設置することで、避難所などのスポットを短時間でWi-Fiエリア化して通話やデータ通信の機能を提供可能なシステムであり、東日本大震災を契機に、NTT・NTTコミュニケーションズ・富士通・東北大学が総務省からの委託を受けて開発した。

サンレミジオ市長による、移動式ICTユニットと衛星回線を用いたマニラとの通話

今回の実証実験を通して、移動式ICTユニットがフィリピンの台風被災地における通信ネットワークの応急復旧に有効であることの確認に加えて、巨大台風来襲を想定した新たなユース・ケースを創出するなど、サンレミジオ市の対災害体制整備に貢献したとしている。

これを受けて同市は、NTTコミュニケーションズが提供した移動式ICTユニットの市内各地への配備拡大に向けて「アタッシュケース型ICT BOX」の実導入を2016年3月に開始した。同装置は、提供機能を絞り込むことで可搬性をさらに高めた移動式ICTユニット。通話機能を提供するアタッシュケースには、交換機能を持つPC、バッテリー、Wi-Fiアクセスポイントを搭載し、被災地に持ち込むことで即座に周辺の通話手段を提供可能という。

災害発生を想定し、救済物資を運ぶ指示を伝令する模擬訓練

スマートフォンを使って情報収集を行う市職員

なお、同市では災害復旧用途に限らず、同ユニットを平時のインフラとして利用する教育・医療などのサービス提供といった、同ユニットの利用用途拡大を計画している。