前編では、AIDMA、AISAS、DECAXについて、それぞれが誕生した背景についてご紹介しました。後編では、「Discovery(発見)→Engage(関係構築)→Check(比較・検討)→Action(購買)→eXperience(体験と共有)」の一つ一つのプロセスに関する概要と、コンテンツマーケティングの肝である「Discover(発見)」の手法とその重要性についてご紹介します。

コンテンツマーケティングに対応した消費行動プロセス「DECAX」(前編)

「Discovery(発見)」~「eXperience(体験と共有)」までのプロセスについて

前編で触れたとおり、スマートフォンやソーシャルメディアが誕生し10年以上が経ち、またそれらに最適なメディアフォーマットの開発や配信テクノロジーの進化により、消費者のメディア接触は大きく変化してきていると考えられます。

生活者はこれらのデバイス・メディア上に何気なく提示されているコンテンツを、気分の赴くままに選択する事で、大部分の情報収集を済ませるようになってきています。マスメディア視聴のような受動的なコンタクトでもなく、検索のような能動的なアクションでもない、このような偶発的発見からの情報探索行為を「Discover」と定義しました。企業側から見た場合、このDiscoverのプロセスにおいて、ビッグデータ分析のためのディープラーニングのような、偶発的イベントに再現性をもたせるためのテクノロジー活用がポイントとなります。

Discoverの次に来るプロセスが「Engage」になります。Discoverがコンテンツとの出合いを実現するテクノロジーを指しているのに対し、Engageはそのコンテンツ自体の引きつける力を意味しています。このプロセスにおいては、テキスト、音声、画像、動画、デジタルコンテンツならではのフォーマットフリーな環境下で、いかに驚きと納得性のあるコンテンツを作り込めるかが重要となります。

コンテンツマーケティングの時代になり、良い面と悪い面が顕在化してきました。良い面は、より説得力の高い新しいコミュニケーションチャネルが誕生したこと、悪い面は、コンテンツに対する社会的信頼性が低下したことです。

元々信ぴょう性が担保されていたマスメディアのコンテンツと異なり、オンラインのコンテンツは出自が不透明な場合が多いです。コンテンツをDiscoverさせ、それにEngageさせたとしても、生活者はそのコンテンツの真偽や真意を本能的に嗅ぎ分ける力を身につけ始めていますし、ソーシャルメディア上での「いいね」、「シェア」、「コメント」等を参照して、そのコンテンツがどの程度の社会的コンセンサスを獲得しているかも観察しています。

このプロセスが「Check」です。現在ソーシャルメディアは、単にオーガニックリーチを稼ぐための機能ではなく、コンテンツの信頼性を担保するためにも重要な指標になってきていると考えられます。

「Action」は消費行動そのものを意味しており、マーケティングの究極のゴールは、「選ばれるための必然性を創ること」だと考えられますので、DECの段階でどれだけユーザーの需要を固めきれているのかが重要です。

前編でご紹介したとおり、コンテンツマーケティングは、顕在ニーズの刈取というよりは、潜在ニーズの発掘に適したアプローチですが、実は消費行動後のユーザーとの関係作り・深化にも有効的な手法です。Youtube上で、最近How-toやTips動画が定着してきていますが、マーケターもこれらのコンテンツを通じて、既存ユーザーに対し商品やサービスの新しい使い方や魅力を伝えて行くことが可能です。

このプロセスを、コンテンツを通じた「eXperience」と定義しました。コンテンツハブやシンジケーションパートナーの準備、コンテンツ制作チームの構築など、今までのマーケティングとは異なる組織・体制が求められますが、長期視点で常設型のコンテンツを蓄積していく事はロイヤルユーザー育成やLTV向上施策上大きな資産になります。これらのコンテンツは、図中のフィードバックループで示されている通り、新たにDiscoverされ、新規ユーザー獲得にも貢献していく事が期待されます。

コンテンツマーケティングの始めの一歩

歴史的にメディアとコンテンツの分離思想が定着しており、コンテンツだけを切り離して、マーケティングしていく事に対する理解が進んでいる欧米ですら、実際にコンテンツマーケティングをコミュニケーション戦略の中核に据え、着実に成果を上げている企業はまだそれほど多くはありません。

日本でも、まだ多くの企業が、手探りでコンテンツ制作に着手している状況だと考えられます。ただ、コンテンツマーケティングにおいては、マス広告キャンペーンと異なり、制作作業と配信作業は更に一体化しなくてはなりません。マス広告ではキャンペーンが一旦開始されると、制作物も配信プランも簡単に変更できませんが、コンテンツマーケティングでは双方ともに運用していく必要があるからです。

運用の複雑度は一気に高まりますが、コンテンツマーケティングを始めたい、また始めたけれどまだ消化しきれていないマーケターのご担当者様は、コンテンツ制作に係るインサイトデータの抽出にも積極的に取り組んでいるOutbrainなどのコンテンツ集客支援会社に一度相談してみるものよいのではないでしょうか。

まとめ

以上、コンテンツマーケティングに対応したユーザー購買行動プロセス「DECAX(デキャックス)」についてご紹介しました。今後においても、ユーザーの情報入手のあり方は常に変化し続けますが、「ユーザーにとっての有益な情報」の価値は変わることはないと考えています。コンテンツマーケティングを実施する多くの企業が、このDECAXをフレームワークとして活用して頂き、より皆様のマーケティングの目的が達成される一助となりましたら幸いです。

著者略歴

内藤 敦之
電通デジタル・ホールディングス シンガポール リージョナルダイレクター
1998年電通入社。関西支社でマーケティング、デジタル・ビジネス、クリエイティブ、グローバル・ビジネスを担当後、2012年より電通デジタル・ホールディングス支社に異動し、シンガポールでデジタル領域の事業開発・パートナーシップ開発を担当。2015年より現職。