ベルギーの独立系半導体ナノエレクトロニクス研究機関であるimecは、同国ルーベン(Leuven)郊外の小さな町Heverleeにある同社本部キャンパス(図1)内にかねてより建設中であった新しい300mmクリーンルーム(床面積4000m2)を2016年3月に開所した(図2)。

図1 300mm対応の新クリーンルームを増築する以前のimecキャンパスの全景。写真に写っている道路を写真右端に移し替えて敷地を広げ、矢印で示した四路枠で囲んだ場所に新たにクリーンルームを増設した。手前はimecタワー(本部管理棟)、中央は既設300mmクリーンルーム棟、奥は200mmクリーンルーム棟 (出所:imec, 2013年撮影、矢印と白線は著者加筆)

図2 既設の300mmクリーンルーム棟に隣接して新築された新300mmクリーンルーム棟(床面積4000m2)。右側の背の高い建物はimecタワー(本部管理棟) (出所imec。2016年3月撮影)

次々世代の半導体プロセスとなる7nm、そしてその後の5nmプロセスを用いたデバイスを開発するためには、デバイスそのものの構造や使用する材料が大きく変わってくるため、新たな半導体製造装置を一式揃えなければならず、それらの装置を設置する場所として新たなクリーンルームの建設が求められていた。こうした背景からimecでは、既設の450mm-ready 300mmクリーンルーム(天井の高さや床荷重を450mm装置対応に設計されたが、当面は300mmウェハ処理用に使われるクリーンルーム。図3、図4)の隣接地に対応クリーンルームを新たに建設した。

図3 既設の300mmクリーンルーム内部 (出所imec)

図4 建設途中の新300mmクリーンルーム。既設の300mmクリンルーム棟(写真左端)に外壁が見える建物)隣接して建設した。(2013年に筆者撮影)

imecの社長兼CEOであるVan den hove氏は、新クリーンルームの開所式で「imecは、1984年に設立以来、高い目標を掲げ、世界最大の独立系ナノエレクトロニクス研究センターに成長してきたが、この成功は、世界のトップクラスの半導体メーカーを含む幅広い国際的な協業ネットワーク、世界トップレベルの卓越した科学者・技術者集団、そしてimecの誇るインフラよるところが大きい。今回のクリーンルーム拡張により、研究パートナーは、最先端の施設や製造装置を使って、IoTや持続可能な将来に向けた革新的な研究を継続して行えるようになる。これにより、将来、地元およびグローバルなハイテク産業でimecの成功は確実なものになった」と述べた。

10億ユーロを投じて7~5nm試作環境を整備

「今回のクリーンルームの建築費用と搬入される設備の総額は10億ユーロ(約1300億円)を超える」とVan den hove社長は話す。このうち、1億ユーロ(約130億円)をベルギー国フランダース地方政府が出資し、残りの9億ドル(約1200億円)余りを、imecと研究開発契約を結ぶ世界中の半導体および装置材料企業90社が負担するという。 

新クリーンルームの施工は、ドイツに本社を置く世界規模のハイテク・エンジニアリング企業、M+Wグループが担当した。同社はゼネコンの多い日本では余り知られていないが、台湾TSMCや米国ニューヨーク州のGLOBALFOUMNDRIES(GF)のファブ8や同州に本拠を置くGlobal 450mm Consortiumの450mmクリーンルームなど、(日本を除いた)世界中の最先端半導体ファブの多くを手掛けている。

増設クリーンルームには、正式な開所前の2016年1月から半導体製造装置(多くは開発段階のアルファ機やベータ機)の搬入が始まっている(図5)。最初に搬入されたのは、日本のアドバンテスト製のEB直接描画装置(図5)で、その後、縦型炉(ASM International製)、 イオン注入装置、重ね合わせ精度測定装置など、最新の製造装置や検査・分析装置の搬送が続いている。

図5 装置搬入が始まった新クリーンルーム内部。(出所imec。2016年3月撮影)

図6 新クリーンルーム搬入1号機となった日本製EB直接描画装置(筆者撮影)