新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は3月28日、大阪大学(阪大)とデンソーらの研究グループが、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体用接合材の自己修復現象を発見したと発表した。

電力変換器などのパワー半導体応用製品において、故障の主要因は接合部の剥離といわれており、特に高い信頼性が求められる自動車応用では、接合部の寿命が重要な要素となっている。NEDOは、2009~2019年度の「低炭素社会を実現する次世代パワーエレクトロニクスプロジェクト」において、接合材として従来用いられているはんだ材より電気、熱的特性に優れた銀焼結材の開発を行っているが、剥離寿命が短いのが実用化における課題となっていた。

マイクロサイズとサブミクロンサイズのハイブリッド銀粒子ペーストを用い、250℃の低温で30分間の大気中の接合プロセスにより、ダイアタッチ接合構造が得られるが、今回の実験では、銀粒子を高密度に焼結し、引張り試験片を作製。同試験片にノッチ加工を施し、わずかな引張荷重を掛けることで、ノッチの先端に鋭い亀裂を導入した。そして、この試験片をSiCパワー半導体の動作温度を考慮して、大気中で200℃、および300℃で保持し、亀裂先端の変化の様子と試験片の引張り強度変化を調べた。

この結果、初期では亀裂が大きく開いているのに対し、200℃で保持した場合には亀裂が閉じつつあり、300℃に温度を上げると亀裂の自己修復現象がより明確になった。

亀裂の自己修復の様子(左が修復前、右が修復後)

NEDOは今回の発見により、銀焼結材の実用化における課題であった剥離寿命について、自己修復によって解決できる可能性を見出し、自動車分野への適用可能性が高まったと説明している。