企業がIoT、データ分析、ソーシャルメディアなどの新たな技術によって、ビジネスモデルを構築して価値を創出する動きが「デジタルトランスフォーメーション」として注目を集めている。さまざまなベンダーがデジタルトランスフォーメーションに対する取り組みを表明している中、SDDC(Software-Defined Data Center)を標榜するヴイエムウェアはどのようなアプローチをとっているのだろうか。
ヴイエムウェアはこのたび、2月に開催された「IBM InterConnect 2016」でIBMクラウドとの連携が発表されたSDDCに関する説明会を開催した。説明会では、VMware クラウド インフラストラクチャおよび管理ソリューション担当上級副社長のラグー・ラグラム氏が、「ソフトウェアが新たなデジタルビジネスを定義しており、デジタル企業はソフトウェアに取り組む必要がある。その時、インフラが重要であり、われわれのビジネスにつながる」と述べた。
さらに、デジタルトランスフォーメーションにおいてはアプリケーションの開発が必要となるが、迅速な開発を支えるインフラが重要だとした。SDDCはアプリケーションの開発や配信においても有効だという。
デジタルトランスフォーメーションを実現するにあたっては、アーキテクチャがカギとなるが、ヴイエムウェアはその解として「One Cloud, Any Application, Any Device(1つのクラウドであらゆるアプリケーション、あらゆるデバイスに対応)」を掲げている。
One Cloudを実現するインフラがSDDCとなる。ラグー氏はSDDCの代表的な事例として「インフラサービス提供の自動化」「マイクロセグメンテーション」「DevOpsに対応したIT」を挙げた。
マイクロセグメンテーションとは、ハイパーバイザレベルで通信制御を行うことで、仮想マシン間の通信を制御して、内部でのマルウェアの拡散を防ぐ仕組みだ。同社はマイクロセグメンテーションを実現する製品として、ネットワーク仮想化ソフトウェア「VMware NSX」を提供している。
ラグー氏によると、企業の80%のトラフィックがデータセンターの中にあるが、セキュリティ対策はデータセンターに入ってくるトラフィックには向けられていないという。同氏は「NSXを導入した企業の最大の理由がマイクロセグメンテーション。マイクロセグメンテーションを利用することで、インフラの安全性を強化できるうえ、コストを3分の1に抑えられる」とマイクロセグメンテーションのメリットをアピールした。
さらに、SDDCに関する製品として、「VMware vSphere」「VMware Virtual SAN」「VMware vCenter Server」で構成される「Hyper-Converged Software」が紹介された。Hyper-Converged Softwareは、x86サーバとそれに直接接続されたストレージをハイパーコンバージド・インフラへと進化させるものだ。
同社はハイパーコンバージド・インフラをSDDCを実現する基盤として位置づけている。ちなみに、ハイパーコンバージド・インフラとは、複数のX86ベースのサーバを統合し、共有のストレージアレイを利用せずに、内蔵のストレージを仮想化して単一のストレージプールとして利用する仕組みだ。
今年2月、ストレージ仮想化ソフトの最新版「VMware Virtual SAN 6.2」が発表された。同製品は、フラッシュストレージ1GB当たりコストを1ドルで実現できるとして、企業のオールフラッシュ・ストレージを推し進めようとしている。
ラグー氏は「Hyper-Converged Softwareのメリットは選択性にある。Nutanixのハイパーコンバージド・インフラはプロプライエタリな製品になるが、富士通やデルの場合、ソフトウェアがハイパーコンバージド・インフラを実現するのでハードウェアに依存しない」と語った。