米グーグル傘下の英国ベンチャー企業ディープマインド社が開発した人工知能(AI)囲碁ソフト「アルファ碁」と、世界トップクラスの韓国人プロ棋士が対決し、5回戦でアルファ碁が4勝1敗と大きく勝ち越した。グーグル社、ディープマインド社が15日発表した。アルファ碁には、コンピューターが自ら学習する「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる新技術が導入されており、最先端のAIのレベルと進化の速さを世界に伝える結果となった。

世界の囲碁界だけでなく広く注目されたアルファ碁と韓国の棋士李世ドル(イ・セドル)九段との対決は韓国ソウル市内のホテルで9日から15日まで5回行われた。第1戦から第3戦までアルファ碁が3連勝し、囲碁界を中心に衝撃が広がった。しかし、この後13日の第4戦で李九段が初勝利し、一矢報いた。15日の最終戦が注目されたがアルファ碁が勝利し、AIの実力を見せる形となった。

グーグル社などによると、最終戦の対局は最後まで接戦で、280手で李九段が投了した。米国のプロ棋士は「アルファ碁が(人間の棋士と比べて)どこが優れどこが足りないのか指摘するのは難しい。アルファ碁は序盤にミスをしたがその後挽回した」と解説し、対決は進化したAIが勝利したものの、プロ棋士も健闘したとの見方を示している。

アルファ碁は、プロ棋士の対局データに加え、自分自身との対局データも大量に蓄積した。その量は3千万種類に及ぶという。その膨大なデータから自ら学習し判断能力を高めるディープラーニング技術により他の囲碁ソフトより格段に強いレベルになっていた。

ディープラーニングは、人間の脳の神経回路を模して情報処理し「コンピューターが自ら学ぶ手法」といわれる。データ処理をあらかじめプログラムする従来の手法と異なり、AIが入力された大量データの特徴を自ら見つけて反復学習する手法、という。AI技術の最先端の手法として、自動運転技術など交通部門や医薬開発、人間に近いロボット開発などへの応用研究が進んでいる。

チェスや将棋、囲碁など知能ゲーム分野でのAIの挑戦は、「人間とコンピューターとの知の対決」として注目されてきた。チェスの世界では1997年にIBMのコンピューターが当時の世界チャンピオンに勝利、将棋でも2010年以降コンピューターがプロ棋士らに勝つ例が続いた。しかし、囲碁は縦19、横19、361の交点の上に碁石を置いて陣地を争う盤面が広いゲームで、対局展開 パターンも10の360乗通り以上。次の布石が有利か不利かの局面判断が難しく、AI技術を駆使してもプロ棋士に勝つことは容易ではない、とされていた。

しかし、アルファ碁は2015年10月に当時の欧州チャンピオンのプロ棋士に5戦全勝。ほかの開発済み囲碁ソフトとも繰り返し対戦したが99%以上勝利し、ことし1月28日 ディープマインド社が結果などをまとめた論文が、英科学誌ネイチャーに掲載された、と発表、昨年対戦に勝ったプロ棋士よりレベルの高い李九段との対決も予告していた。

今回の対決結果については多くの専門家が、ディープラーニング技術によりアルファ碁がプロ棋士をも上回る「大局観」を獲得した結果とみている。

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