新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は3月10日、人工光合成を実現する混合粉末型光触媒シートを開発したと発表した。

同成果は、NEDO、人工光合成化学プロセス技術研究組合、東京大学、TOTOらの研究グループによるもので、3月7日付けの英国科学誌「Nature Materials」のオンライン速報版に掲載された。

NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合は、「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発(人工光合成プロジェクト)」において、太陽エネルギーを利用し光触媒によって水から得られるクリーンな水素と、二酸化炭素を原料とした基幹化学品製造プロセスの基盤技術開発に取り組んでいる。

今回、同研究グループは、同プロジェクトにおいて、水中に沈めて太陽光を当てるだけで、水を分解して水素と酸素を発生させることができる混合粉末型光触媒シートを開発した。同シートは、可視光を吸収する水素および酸素発生用の2種類の光触媒の粉末を混合してガラス基板上に塗布し、蒸着によりその上に導電層を形成、その後、導電層および光触媒層を剥離する粒子転写法プロセスを経て作製される。

同シートを用いた太陽エネルギー利用の水素製造において、今回、太陽エネルギー変換効率1.1%を達成。また同シートは、同一面上で水素と酸素を生成することができるため、高性能を維持したまま大面積に拡張可能であることも特徴だ。同研究グループは、実用化の際に必須となる大量生産への展開に向け、簡便なスクリーン印刷による塗布型化にも成功し、水素および酸素の定常的な発生を確認している。

今後、実用化に向けた水素製造デバイスおよびモジュール構造の最適化を進め、2021年度末までに太陽エネルギー変換効率10%の達成を目指すという。

混合粉末型光触媒シートによる水分解の概念図

粒子転写法を用いた混合粉末型光触媒シートの作製方法