IDC Japanは2月25日、国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表した。これによると2015年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は前年比32.3%増の2614億円。また、同市場における2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は19.5%で推移し、2020年の市場規模は2015年比2.4倍の6370億円を予測している。

国内パブリッククラウドサービス市場 売上額予測:2015年~2020年

国内パブリッククラウドサービス市場は普及期を迎え、システム導入(新規/刷新/更新)時にクラウドを検討するユーザー企業が増加し、特に大企業ではクラウドの検討は一般化しつつあり、パブリッククラウドサービスは重要な検討項目となっている。また、クラウドと伝統的なITを同等に比較検討するクラウドオルソー(Cloud Also)から、クラウドを優先的に検討するクラウドファースト(Cloud First)への変化も見られるという。

2015年の国内パブリッククラウドサービス市場ではIT資産の継承を目的とし、既存の業務アプリケーションをIaaS(Infrastructure as a Service)/PaaS(Platform as a Service)環境上で稼働させる「クラウドイネーブルド」の動向が顕著に見られたほか、一般消費者向けWeb/Mobileアプリケーションの開発、稼働環境としてIaaS/PaaSを利用することは一般化しているという。

国内パブリッククラウドSaaS(Software as a Service)市場では、モバイル対応に優れた汎用的なアプリケーション(コラボレーティブやCRM)はクラウドファーストが浸透したという。また、Human Capital Management(HCM)や「マイナンバー管理ソリューション」といった新しいアプリケーションは、SaaSモデルでのみ提供されることが増加し、ユーザー企業の意識に関係なく、ベンダーのクラウドファーストが進んでいる。

国内パブリッククラウドサービス市場は成長市場であることは言うまでもなく、汎用性の高いサービス(IaaSやコラボレーティブアプリケーション)はコモディティ化が進んでおり、ベンダーの寡占化が見られるという。一方、ユーザー企業の裾野は広がっており、産業特化型アプリケーションなどはサービスの多様化/細分化が進むと同社では想定している。

同社のITサービス リサーチディレクターの松本聡氏は「国内パブリッククラウドサービス市場では、汎用性の高いサービスは寡占化が進むため、生き残るベンダーは数社にとどまる。したがって、アプリケーション領域での差別化が多くのベンダーにとって重要な事業戦略となる」と分析している。