ペプチドリームと宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月24日、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟を利用した高品質タンパク質結晶生成実験を包括的に実施する受託契約を締結したと発表した。契約の実施期間は、2016年2月から2017年8月までを予定している。
ペプチドリームは、20種類の天然アミノ酸と非天然の特殊アミノ酸を結合させて創成した「特殊ペプチド」を利用することで創薬に貢献している企業。同社独自の創薬開発プラットフォームシステムを用いて、広範囲にわたる特殊ペプチドを多数合成し、迅速な評価を可能にすることで、創薬において重要なヒット化合物の創製、リード化合物の選択、および創薬標的タンパク質と医薬品候補化合物の相互作用様式の理解を、簡便かつ効率的に行うことが可能となっている。
同契約は、ペプチドリームが保有する、感染症、がん、生活習慣病などの疾患につながる複数の創薬ターゲットとなるタンパク質を対象に、最大取扱試料数のみを規定し、候補タンパク質が決定した段階で、作業に速やかに着手できるような形態になっている。また、地上実験および宇宙実験・回折実験フェーズからなっていた従来の有償利用定型サービスに加え、今回新たにコンサルティングフェーズおよび構造解析フェーズが設定されている。
JAXA 有人宇宙技術部門長・理事 浜崎敬氏は「民間企業のスピードについていくのが大きな課題だったが、今回さまざまなプロセスを改善することで迅速・柔軟に対応できるようにした」と説明している。今回のような包括的連携は初めてだというが、ほかの利用者に対しても要望に応じて提供する予定だという。
同契約を決定した理由について、ペプチドリームは「宇宙でタンパク質の結晶化を行うと、得られるX線回折構造データの分解能を数倍程度上げることができるため、特殊ペプチドによって固定された部分の詳細なデータを得ることができる。またトライアルユースとして地上実験を行った際に、JAXAの技術力・人材が高いレベルにあると判断した」ためであると説明。
浜崎氏は「有償利用の場合、企業の知財を守るという観点から成果を非公表とすること多いが、今回は成果が得られ次第、発表する予定。宇宙実験の成果を創薬という形で発表できる日が来ることを楽しみにしている」とコメントしている。